第七十三話 やっと内政ターンがやってきた
帝国歴二六二年 真珠月(六月)
今年はとにかく年初から忙しい。
ヴァンドラ侵攻に始まり、魔王陛下肝入りのご依頼で、アレクサ国内での反乱指導したりして、半年近くを使っている。
あー、仕事が多すぎて身体が三つくらい欲しいぜ。
一つは内政官として内政業務を取り仕切る俺。
一つは軍師として謀略を取り仕切る俺。
一つは嫁と嫁の愛人を愛でる俺。
もちろん、俺自身は嫁と嫁の愛人を愛でる任務に勤しむ俺を選択させてもらうけどね。
そうそう、カランの件だけどさ。
初めての相手が性欲大魔神のマリーダだったせいで、とんでもなくエロいこと仕込まれて、言うがままなすがままな状態にされてる。
エロいことに積極的な女の子にされちゃってる。
もちろん、俺も少しだけお手伝いさせてもらったけどね。
今はアシュレイ城に一室を与えられて、メイド長のリシェールとともにマリーダの身の回りの世話係をしてもらっていた。
それとは別に彼女には従兄ゴランの説得に尽力してもらうつもりだ。
ザーツバルム地方に残ったアレクサ側の領主の討伐は、裏切った者たちの頑張りにより、ほぼ完了。
裏切った者たちも戦力を大いにすり減らし、ステファンによって旧領を召し上げられて、戦闘でボロボロになった新領地を授けられるという酷い論功行賞の真っ最中。
再び裏切ろうにも、馴染んでいない領民と疲弊した戦力では、エランシア帝国に一捻りにされてしまうので、血の涙を流しながら荒廃した新領地を何とかするしかなかった。
裏切者にはうちの魔王陛下は厳しいからなぁ。
もちろん、俺も厳しい。
味方の顔をして近づいてくる敵が一番厄介だしね。
でも、まぁこれでザーツバルム地方は、ほぼエランシア帝国の息のかかった勢力が抑えたことになる。
ザーツバルム地方は緩衝地帯にすると魔王陛下からも言われているので、積極的な開発を行うつもりはない。
アレクサ王国は王の崩御による後継者争いで、外に目を向ける余裕を失ってるから、うちらの軍事的作戦はほぼ終了したとみていい。
さぁ、これでしばらくは内政ターンだ。
「アレウスとフリンとリゼたんとカランたんと一緒に水浴びしゅるー! 今日のお仕事は終わりなのじゃー! 妾は当主である前にアレウスの母なのじゃ」
「ダメですよ。まだ、溜まっている印章押しが終わってませんから! カラン様もまだ服を脱ぐのは早いです! マリーダ様は甘やかしたらダメですよ」
「は、はい。でも、やはり暑くなってきましたし、水浴びしてからの方が効率よくお仕事をできるかと」
「そうなのじゃ! カランの言う通りなのじゃ! お仕事はんたーい!」
「マリーダ様のことですので、水浴びと称して真昼間からエロいことをしようとしてるだけなのは明白」
「酷いのじゃ! リシェールの物言いだとまるで妾がエロエロ当主に聞こえるのじゃ!」
んー、リシェールの言う通りだな。
マリーダは生粋のエロ当主。
きっと、水浴びだけで終わるとは思えないし、あんなことやこんなことを考えるに違いない。
ただでさえ、一ヶ月の遠征で貯め込んだ印章押しの仕事が滞っているため、遊ばせておくわけにはいかないのだ。
「マリーダ様、今日遊ぶと明日の分が更に増えますがいいんですか?」
「ぐぅうう! 嫌じゃ! お仕事がこれ以上増えるのは嫌じゃ!」
一日一〇枚だったノルマは、サボったせいで二〇枚ほどまでに増えている。
俺なら三分で終わらせられるが、マリーダにとっての二〇枚は一〇〇人の敵を屠るより難しいことらしい。
「なら、お仕事してくださいね」
俺はマリーダに対し、執務机を指差した。
「カランたんー! アルベルトが酷いのじゃー!」
「でも、アルベルト様の言うことを聞かないと、色々と困ることになりますし、わたくしがしっかりとお手伝いいたしますので、早くお仕事を終わらせましょう」
「終わったら水浴びしておっぱい揉んでいい?」
「はい、承知しました! そうしましょう!」
ヤル気を取り戻したマリーダが自分の執務机に戻ると、印章押しを再開させた。
さて、俺も溜まってる仕事を片付けないとな。
なになに、フリンを通じて上がってきた開拓村の新設を願い出る嘆願書か。
さすがにザーツバルム地方からの農民移住者が増えて、あの村だけじゃ収まりきらないみたいだな。
あの辺は放置されてた未開発地帯だし、港湾整備も堤防整備もあるし、農村が増えてもらえると働き手も確保しやすくなる。
新設は許可っと。
予算はミレビス君と要相談。
レイモアの大工衆も堤防整備で近くにいるから手伝ってもらうか。
はい、指示書完成。お次は~。
ニコラスに任せてたアルカナの鉱山の報告書ね。
試掘完了し、大きな鉱床のある山腹から横坑を開け始めたと。
『地底人』たちからは、最終的に山頂から縦坑を通して露天掘りにすると言われたな。
まぁ、でも横坑掘りでも鉱石は採掘されるし、産出される規模に応じた精練設備も整ったし、これからは利益を出してくれるターンに入りそうだ。
銀以外にも銅や錫も取れるので、そちらも何か加工品にして産物にして売り出さないとな。
『金属加工の技術者の招聘の必要あり』と。
はい、お次~。
山の民のワリハラ族長からの申請か。
なになに、山の民特製ドリンクの香油との併売許可申請とな。
あー、あのリュミナスのやつーね。
本来なら夜通し山を駆けて狩猟するためのドリンクだったらしいけども。
効果はどう考えてもエロ特化でした。
ヤル気百発くらい夜の性活にチートできる栄養ドリンクと香油のセット販売か。
各国のエロ貴族様たちが喜んで高値を払ってくれる気がするね。
許可、許可。
あとついでに各国の貴族様の下半身事情の情報収集もしといて。
スキャンダル抑えておけば、いろんな場面で切り札にできるからね。
情報提供料として、ドリンクの売り上げは山の民の懐に入れてよしと。
山の民とは仲良くしたいから、早いところリュミナスとも子供作らないと。
はい、お次~。
ラインベールから商業用地拡大の申請が来てるな。
ヴァンドラとの相互入市税廃止が功を奏して、ヴェーザー自由都市同盟の商人がアシュレイ城下に増えたらしい。
中には支店を構えたいと思う商人もいるようで、ラインベールのところに相談が色々と持ち込まれてるそうだ。
商人を介して物が動けば、うちにもいっぱいお金が落ちるから、いろんな商人が店を構えられるようにしてやった方がいいかもしれん。
商業用地拡大は可。
候補用地の選定はラインベールに一任。
用地販売はオークション式、一部土地は自由市として零細商人に解放すること。
一部を自由市にしたのは、零細商人でも知恵を使えばアシュレイドリームを掴むことができるよう場所を提供したいからだ。
知恵さえあれば成り上がれるとなれば、野心に燃える商人たちが集まってくるはず。
そういったギラギラした人材をスカウトして、うちの文官団に組み入れていきたい。
しばらくしたら、第二回の採用試験実施するのもいいな。
サラサラと指示書を書き終えると、午前中の決済を終えていた。
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