第四十九話 帝国歴二六〇年決算報告書
帝国歴二六一年 柘榴石月(一月)。
ハッピイイ、ニュ―イヤァアアアーーー!! ヒャッハー年が明けたぜ。
一七歳だ。ニューアルベルト・フォン・エルウィン様だ。
去年はギリギリ暮れ間近にマリーダに懐妊ゴールを決め、やることリストの一つをクリアすることができた。
いや、頑張ったかいがあった。毎日、毎日、時間を惜しまず励んだ甲斐があったよ。
リミュナスの作る栄養ドリンクはマズいが効果は抜群だったし、何よりイレーナ始め、人族の文官君たちの成長ぶりが凄まじく、労働時間が急減したおかげもあった。
一昨年末の地獄のデスマーチを思えば、今年は遊んでいたと言われてもおかしくないほどに、事務管理の時間が急減している。
なんで、イレーナが頑張ってくれた帝国歴二六〇年度決算報告書を見てくれたまえ。
エルウィン家 帝国歴二六〇年決算書
人口:アシュレイ城(本領)19074名(1216名増) スラト城(アルコー家保護領)3306名 合計23380名
租税収入(帝国金貨換算)
・入市税……帝国金貨3645枚
・施設使用税……帝国金貨1023枚
・相続税……帝国金貨54枚
・土地売買税……帝国金貨58枚
・賦役免除税……帝国金貨605枚
・売り上げ税……帝国金貨2045枚
・生活必需品税……帝国金貨1459枚
租税収入総計(金納分):帝国金貨8889枚(+235枚)
租税外収入(帝国金貨換算)
・『勇者の剣』討伐利益……帝国金貨12283枚
・放出品売却益……帝国金貨17545枚
・香油専売利益……帝国金貨5423枚
租税外収入総計:帝国金貨25251枚
収入総計:帝国金貨44140枚(-1014枚)
人件費(帝国金貨換算)
・小者……帝国金貨1枚×12ヵ月×100名=帝国金貨1200枚
・小者頭……帝国金貨3枚×12ヵ月×25名=帝国金貨900枚
・従士……帝国金貨3枚×12ヵ月×75名=帝国金貨2700枚
・戦士……帝国金貨4枚×12ヵ月×200名=帝国金貨9600枚
・戦士長……帝国金貨10枚×12ヵ月×11名=帝国金貨1320枚
・家老……帝国金貨15枚×12ヵ月×1名=帝国金貨180枚
家臣総数:412名(45名増)
人件費総計:帝国金貨枚15900枚(+1380枚)
諸雑費(帝国金貨換算)
・当主生活費……帝国金貨500枚
・飼料代……帝国金貨60枚
・城修繕費……帝国金貨560枚
・装備修繕費……帝国金貨626枚
諸雑費総計:帝国金貨1746枚
支出総計:17646枚(-11250枚)
収支差し引き:帝国金貨26494枚増
繰り越し金:帝国金貨81476枚(本年度26494枚増)
本年度地代+人頭税として(食糧物納分):390万食
備蓄食料:280万食(+70万食)
全人口籠城時:60日分(一日二食配給)
完璧だ! いい仕事した。イレーナ&ミレビス。
驚くべきは、村長たちの地代と人頭税のちょろまかしを撲滅したら、収められた食糧がほぼ倍増していたことだ。
どんだけちょろまかしてやがった。
その余剰食糧の在庫を、ワリドたちの集めた相場情報を見て、ミレビスやラインベールを通じて計画的に酒保商人たちへ放出したら、大いに利益を産み出していた。
おかげで、エルウィン家の財政も長期持久体制に移行できそうである。
これで、アルカナ城を手に入れれば、更に収入を増やせると思われ、人口増加のための施策として、減税を導入することも検討する段階に入りつつある。
そのアルカナも新年から、血なまぐさい話が漂っている。
地元派の内応に焦ったアレクサ王国派からも内応者が出たのだ。
もちろん、そんな奴らは受け入れる気はないので、またまた『偶然』に裏切り情報を書いた羊皮紙がリヒトの手に落ちてしまう。
ってなるようにゴシュート族に頼んでおいた。
効果テキメン。リヒトは自分を推してくれる家臣すらも討った。
「アルカナ城内は阿鼻叫喚だぞ。アルベルト・フォン・エルウィン。いや、『金棒』アルベルトと言った方がいいか?」
「その異名、何とかならんかね」
「近隣領主はお主のことを恐れ始めているぞ。鬼のエルウィンを変えた男としてな」
アルカナ城の様子を報告にきていたワリドがニヤリと笑う。
『金棒』ってなにさ。そりゃあ、ナニがカチコチで素敵って嫁たちには言われるけどさ。
もっとこうなんか『独眼竜』とか『麒麟児』とか『驍将』とかって厨二心をくすぐるのがあるでしょ。
『金棒』って……。まぁ、エルウィン家が『鬼』って呼ばれるから、その力を倍増させる『金棒』って言われるのは理解した。
「まぁ、仕方ない。それで我慢しとく。あんまり有名になるのも困ることもでてくるから、黙っておくとしよう」
「情報に敏感な領主はお主のことを注視し始めておる」
「あんまり表に出ない方がいいかな。命狙われそう」
「影武者もそろそろ必要かもしれんな。派手な衣装をして顔を誤魔化していこくといいぞ。仮面なんかどうだ?」
〇ャアか? 俺に〇ャアになれと。
仮面か。顔バレ防止になるかな。まぁ、一応考えておこう。
それよりも今はアルカナ城の攻略を進めることだ。
もはや、家臣団はリヒトの疑心暗鬼で崩壊寸前、期は熟しつつある。
なんで、そろそろニコラス始め、所領安堵リストに載せた奴らを先にこちらの領地に保護することに決めた。
城内からの内応という危ない橋は、使い捨てのやつらを使えばいい。
大事な領地経営を担う人材は、失うわけにはいかないので、拉致してでも確保しておくつもりだ。
「よし、ニコラス始めリストのやつらを保護する。一族郎党ごとまずはエルウィン領に脱出させる」
「少なく見積もっても一〇〇名近いぞ。どうやる? リヒトも警戒してるだろう?」
「ん? 簡単だ。ニコラスたちを襲えばいい。エルウィン家が軍勢を率いて、ニコラスやリストに載った者の村々を襲えばリヒトも手が出せないだろ?」
「襲うですと? それでは犠牲が出るが」
「いや、正確には戦うフリをするだけさ。フリね。抗戦虚しく破れ、エルウィン軍に捕らえられる筋書きさ。事前にニコラスたちに話を通しておけばいい。ちょちょっと争った形跡残しておけばいいだろ?」
「戦闘を偽装すると!? その発想はなかった。それならば、捕虜として無事に連れ出せる」
「アルカナ城から見える真昼間にやるつもりだ。ステファン殿にも牽制のための兵を出してもらい、リヒトが城から出れないようにしとく。日時の微調整が必要だから今からニコラスに会いにいく」
「分かった。すぐに準備する」
俺はワリドをお供に今一度、ニコラスの家に行くことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます