第三十三話 城下町

 はい。っというわけで、決算も乗り切って朗らかな気持ちで本日は我が家の城下町を紹介です。


 農村とは別にアシュレイ城下に作られた街。


 パン屋:八軒 理髪店:八軒 浴場:一軒

 ビール製造業者:二軒 ワイン製造業者:二軒 鍛冶屋:二軒 洗濯屋:一軒

 製本屋:一軒 本屋:一軒 商家:五軒 屠殺業者:六軒

 大工:一一軒 毛皮業者:一〇軒 写本屋:三軒 医師:三軒

 衣料品店:一三軒 宝石商:二軒 鍵屋:二軒 石工:一五軒 古着屋:九軒

 皮なめし業者:一軒 居酒屋兼宿屋:八軒 製材業者:一軒


 って感じの商店街がある。街の方の人口は家臣の家族と店舗従業員とその家族で五五〇〇名程度。あとは農村だ。


 この城下町は近隣の農村から、生活必需品を買いに村人たちが買い出しにくる。農村で取れた作物や毛皮、木材など物々交換もするし、貨幣での購入もしていく。


 主要街道に近い立地のため、近隣の商人達も入市税を払って、物資の買い付けにきたり、逆に露店を立てたりしているんで、アシュレイ城下の街はわりと活気がある方だ。


 俺がアレクサ王国の叡智の神殿に入るまで、暮らしていた地方は人も少なく、活気もあまりない領地が多かった。


 人=軍事力=労働力=経済力って換算できるため、この世界では人が貴重なんだよね。


 まぁ、でも戦争ではゴリゴリ殺されるし、暮らしには重税をかけられるし、およそ大事にされているとは思えない扱いだが。


 ただ、豊かな耕作地を多く抱えるエルウィン家は、人口増加策を積極推奨する予定だ。


 余剰食糧は多数あるので、子沢山家族は人頭税の減免&子育て支援金を視野に入れるつもりだ。


 嫁とイチャイチャして子供いっぱい作れば、税が安くなるってようにする。ってすりゃあ、子作り頑張っちゃう人も出るだろう。


 俺は頑張る。最低でもサッカーチーム作れるくらいは嫁たちと頑張るつもりだ。


 ちなみにアルコー家のスラト城内の街はこんな感じになってる。


 パン屋:一軒 理髪店:四軒 浴場:なし

 ビール製造業者:一軒 ワイン製造業者:一軒 鍛冶屋:一軒 洗濯屋:なし

 製本屋:なし 本屋:なし 商家:一軒 屠殺業者:二軒

 大工:三軒 毛皮業者:三軒 写本屋:なし 医師:なし

 衣料品店:三軒 宝石商:一軒 鍵屋:二軒 石工:三軒 古着屋:二軒

 皮なめし業者:一軒 居酒屋兼宿屋:三軒 製材業者:一軒


 スラト城の城下町は一四〇〇名ほどでちょっと小ぶりの街である。


 こちらもスラト城の北側にあるエルウィン領との境目辺りは、滋味の多い豊かな耕作地が多数作れそうであり、人口増加を積極的に推し進め、開墾を促せば、まだまだ伸びる素地をもった領地である。


 エルウィン家の保護領にこそなっているが、リゼの実家であり、俺の子が受け継ぐ可能性もあるんで、しっかりと地盤作りをしてやりたい。


 っとまぁこんな感じの政治や軍事拠点としての『城』、経済拠点としての『街』を駆使して、周辺の農村を支配して領地運営しているんだ。


 ここで、領主や国家運営の理解を得やすくするため、〇クザさんを例えにしよう。え? なんで〇クザさんかって? だって、この世界を仕切っているのは同じ匂いのする人たちだもの。


 さて、じゃあ、まずはうちのマリーダが所属しているエランシア帝国。ちょっとイッテル魔王様が治めてる国ね。〇クザさんの世界でいえば、広域指定暴力団クラスの巨大な組組織。


 イッテル魔王様はそこの組長さんをやってるわけ。で、うちの当主で嫁のマリーダがイッテル魔王様から杯と代紋もらった、傘下の直系一次団体エルウィン組となる。


 俺はそのエルウィン組の構成員。マリーダから領地をもらっているブレストは直系一次エルウィン組の傘下の二次団体ブレスト組となるわけ。


 で、まぁ。周囲にはアレクサ組を始めとした広域指定暴力団が多数あって、エランシア帝国組と抗争をしてるわけさ。


 ちなみに、この世界には警察っていう組織はないんで、抗争事件は超ヒートアップ中なのよね。


 やるかやられるかの世界。エランシア帝国組が『アレクサ組がちょっかいかけてくるから、ちょっと組事務所にカチコミかけてこいや』っていえば、代紋とシマを認めてもらっているエルウィン組は組員率いて駆け付ける義務を負っている。


 それがこの前のアレクサ王国との戦だ。


 あの戦でアレクサ組に所属してたアルコー組のシマは、エルウィン組に任されることになったと言えば、理解されやすいだろうか。


 逆にうちが別の広域指定暴力団から攻め込まれれば、『おどりゃあ! なにうちの子分に喧嘩うっとんじゃぁあ! ワレ!』ってエランシア帝国組が面子をかけて防衛の手助けをしてくれる。


 大親分は子分を見捨てれば、他の子分が離反する可能性がある。


 特に抗争相手との距離が近いところの子分は、常に両方の組を天秤にかけているやつが多いんだ。


 自分の組を滅ぼされたくないしな。

 

 あと、どこにも所属しない一匹狼の組長も多数いる。多くは戦ごとに雇われる傭兵団の頭領たちだ。


 自らの武力で領地を占拠し、そこを本拠に傭兵稼業に精を出している猛者もいる。

 

 ということで、俺が転生したこの世界は『チート無双だぜ。ヒャッハー! 一週間で世界制覇したる』とか無理ゲーですから。


 厨二臭いことを抜かすと、怖いお兄さんたちが殺到して、三度目の人生を送らされる可能性もある怖い世界。


 そんな世界で、アルベルト・フォン・エルウィン。一六歳(数え年)、嫁と嫁の愛人含め四人と暮らしております。


 え? 四人がすでにチートだって? 嫌だなぁ。これでも頑張っているんですよ。主に夜の業務のほうですがね。


 いやぁー、若いって素晴らしいね。睡眠一時間でも頑張れる体力。素晴らしい。


 三十路を越えるとね。急にガクンとくるんですよ。ガクンとね。


 それに引き換え一〇代はいい。粘りが利く。おかげで嫁も愛人たちも大満足ですから。


 転生してチート得て、無双して、魔王退治する? そんなのは厨二病にかぶれた童貞君にお任せしておけばいいっすよ。


 俺は地道に脳筋たちを上手く動かして、嫁と愛人たちとイチャイチャする生活を完遂してやるんだ。


 転生の醍醐味ってそっちだろ? え? TUEEしたい? だって、あの脳筋以上の強さが必要だよ? ムリムリムリ!


 人生上手く立ち回って生き抜くのが、大人の処世術ってやつさ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る