パパサンタ奮闘記! ~ 愛する我が子達の夢を守るために頑張ります ~

月野鷹星(ツキノオウセイ)

サンタを演じるドキドキ感をあなたへ…

 私には3人の子供がいる。

 小学生になる子が男女2人と、幼稚園に通う幼児である。

 この場では、便宜上それぞれ息子、娘、チビと定義しておく。

 さて、そろそろ肌寒くなり、紅葉が色付き始めた11月末の事。


「今年もサンタクロース来るかなー?」


 息子が唐突にそう呟いた。

 それを聞いた私と妻は、もうそんな季節になったかと顔を見合わせ苦笑する。

 何故なら、我々大人にとってクリスマスとは、プレゼントの為に出費がかさむ時期でもあるからだ。


「サンタさんに何を貰おっかなー?」


 やがて、息子の話に便乗するように娘も加わってきた。


「ねーねー、パパー。サンタさんってホントに居るの…?」


 すると、話を聞いていたチビが疑問をぶつけてきた。

 チビにとっては、単なる純粋な気持ちで聞いたに過ぎないだろうが、我々にとってはそうもいかない。


「サンタなんか、居るわけないじゃない」


 ちょ、待て、おま…っ!?

 私がどう説明しようか思案していると、現実主義者リアリストの妻がさらっと爆弾発言をしてくれていた。


「えー、何でー…?」


 案の定、チビはガッカリしている。


「「サンタさんって居ないの!?」」


 息子達が私の元へとやってくるなり、異様なまでに食い下がってきた。

 うーむ、どう伝えれば良いのやら…。


「あなた達、小学生中高学年にもなって、いつまでサンタを信じているの?」


 妻が更なる追い討ちを掛けてくる。

 頼むから止めてくれ…っ!!


「良いかお前達。サンタクロースはな、ちゃんと信じている子供のところにしか来ないんだよ。だから、ママはわざと揺さぶりを掛けて、お前達が信じているか試しているんだ」


 私は、今言えるギリギリの範囲で子供達に言い聞かせながら、口パクで妻に余計な事を言わないよう念を押すと、妻はスマホで顔を隠しながら笑いをこらえていた。

 

「サンタは絶対に居るしーっ! 何言ってるんだよ、ママ」


「えー、あたしは何だか分からなくなってきちゃった。サンタさん居ると良いけどさー…」


「サンタクロース、早く来てくれないかなー?」


 結果は三者三様であったが、取り敢えずこの場は乗り切れたようなので、私はひとまずホッと胸を撫で下ろしていた。


「ねぇ、いつまで信じさせる気なの?」


 その日の夜、子供達は既に就寝し妻と二人でテレビを観ていると、妻がそう話し掛けてきた。


「んー? 信じている間は続けようかな。未だにサンタを信じているなんて、可愛いもんじゃないか」


「何それ。親バカなの?」


「別に良いだろ。その内友達とかに言われて、嫌でも正体に気が付くだろうしな。お前も協力してくれよ」


「はいはい…」


 妻は若干呆れていたが、私は今年もサンタクロースを演出しようと決めていた。

 普段仕事が忙しい私は、こういう時でもないと中々子供達と接点を持てないからだ。

 そして、その日を境に子供達とのやり取りはどんどん白熱していった。


「ねー、パパ。サンタさんってホントは居ないんでしょ? だったら代わりにパパが買ってよ」


「嫌だし。何で買わなきゃならないんだ。大体居ると信じてないと、サンタがプレゼントを持ってきてくれないって言っただろ?」


「ちぇ…っ。じゃあ、新しい靴が欲しいかなー…」


 娘は、元々年齢の割にませているのも相まってか、あの日の一件以来すっかり疑心暗鬼になってしまっている。


「俺、もうサンタさんに何を貰うのか決めてあるんだーっ!」


一方、息子はまだちゃんと信じているようで、プレゼントの内容を決めているらしい。


「ほほう。で、何を買ってもらうんだ?」


「パパ…んじゃないよ、んだって!」


「え…っ!? あ、あぁ、そうだったな…っ!」


「ぷぷっ、自分でも買うとか言っちゃってんじゃん」


「そこ、うるさいっ!」


 私がうっかりやらかした失言対し、妻は突っ込みを入れながら笑っていた。

 幸い息子は、今の発言を気に止めている様子は見られない。

 危ない、危ない…。

 チビについては、まだこれというものがないようで、クリスマスが近くなったら、オモチャ屋にでも連れてって、どんなものに興味があるのか見てから判断する事にした。

 こうして、クリスマスまで2週間を切ろうとした頃に、私は子供達にある提案をしてみた。


「お前達、今日はクリスマスツリーを作るぞ!」


「「えーーー…」」


 私の予想に反して小学生組からはブーイングを食らってしまった。

 何故だ…っ!?


「お前等なー…良いか。クリスマスツリーはサンタクロースが来る時の目印になるから大事なものなんだぞ?」


「パパ、去年出した時は部屋の隅に置いてたよね。あれじゃあ窓から見えないし、意味ないじゃん」


「う゛…。そ、そうだったか…?」


 少しでも、やる気を出させる為にサンタクロースの名前を出してみたが、娘から強烈な一言を貰って見事に返り討ちに遭った。


「クリスマスツリーは何処にあったかな…。あー、あった、あった」


 娘の言葉で心が折れそうになったが、落ち込んでもいられないので、クリスマスツリーを探して箱を開けてみようと試みる。


「げ…、ツリーを支える脚が足りないじゃないか…」


 倉庫に丸一年放置していただけあり、外箱は他の物で押し潰されひしゃげてしまっているだけでなく、蓋が空いていて中身が散乱していた。


「はぁ…。新しいのを買いにいくか」


 私は仕方がなく、買い物ついでに百均へ寄り、材料を買い揃えた後に一人で組み立て始める。


「パパ、何してるのー?」


 すると、どうだろう。

 ツリーが組み上がった頃に興味を惹かれたのか、チビは近寄って来るなり、ツリーに飾るオーナメントが入った袋をいじり出した。


「お前もやるか?」


「うんっ!」


「よーし、じゃあ、この飾りを色んな場所に付けてみようか」


「はーい!」


 幼稚園では既にクリスマスツリーが飾ってあるらしく、チビも乗り気になったところで、やり方を教えながら一緒に飾り付けを始める。

 程無くして視線を感じたので、振り返ってみると何かが壁に隠れた。

 しかし、ばっちり二つの影が見えているのでバレバレである。


「お前等、やりたいなら素直にやりたいって言えよ」


「そ、そんなの別にやりたくなんてねーしっ!!」


「そうだよ! ただ何となく気になったから、来てみただけだし…!!」


 何か二人してツンデレをやっていた。


「さてと、そろそろ一休みするか。その間に誰かやっといてくれれば楽なんだがなー…」


 私はわざとらしく休憩する事を宣言すると、去り際に視線があった先をチラ見してみる。


「よし、チャンスだぜ!」


「だね!」


 やはり、そんなやり取りをしている二人の声が聞こえた。

 もう、隠れてすらいないし。

 暫くして戻ってみると、小さいながらも綺麗に飾り付けられたクリスマスツリーの前で、妻のスマホを使って楽しそうに記念撮影をしている子供達が居た。


「やべっ、パパだ!? 逃げろーっ!!」


 そして、私の姿を見付けるなり、子供達は一目散にその場から逃げ出した。

 お前らどんだけだよ…。

 私はおもむろにクリスマスツリーの出来映えを確認する為に近付いてみると、何やら半分に折り畳まれたメモ用紙のようなものが3枚挟まっている。

 その内の一枚を手に取って内容を確認してみると、走り書きで“サンタさんへ”という文字と共に欲しいものが書いてあった。


「ふ…っ。この字は息子のだな…」


 私は思わずニヤニヤしてしまう口元を右手で押さえながら、他の手紙も黙読していく。

 次の手紙は娘のだった。

 書いているという事は、それなりに信じているととらえても良いのだろう。

 ちゃっかり欲しいものが変わってるし…。

 最後の一枚は妻の字で“良い子にしてますのでプレゼントをください”と書いてある。

 まだ、幼くて字が書けないのと欲しいものが決まっていない為だろう。

 一通り読み終えた後、私はクリスマスに向けて、いつプレゼント買いにいこうか計画を練りながら眠りに就いた。


 妻も私もシフト制の仕事であり、中々都合が合わずクリスマスイブの2日前になってようやく時間が取れた。

 ただ、問題だったのは小学生組が既に冬休みに入っている点である。


「どうやって、プレゼントを買うかな…」


 オモチャ屋があるショッピングモールへ向かう為、準備をしながら私は思い悩んでいた。


「まだ、悩んでたの? あなたトイレ長いんだから、トイレに行くふりしてさっさと買ってくれば?」


「おぉー、その手があったか!」


 私の悩みは妻の発想により、ものの数秒で解決した。

 そうして、いよいよ出掛けるという時に、どうやら天が私に味方したようだ。

 小学生組の友人が遊びに来て、そのまま遊びへ行ったのだ。


「よーし! この期を逃してなるものか…っ!!」


 私は、小学生組の外出を見届けるとすぐさま、妻とチビを連れ立ってショッピングモールへ足を運んだ。

 そして、到着するなり昼食をり、オモチャ屋へとやって来た。

 チビにプレゼントを選ばせる為である。


「チビは何が欲しいんだろう?」


「さぁ…、どうなんだろうね?」


 まだ、好きなものがはっきり定まっていないチビは、やはりあちこち目移りしては、店内に置いてあるお試しの遊具で遊んでばかりだった。

 そこで、最近とある動物のフィギュアに興味を持ち始めたとの妻の助言で、それが売られているコーナーへと誘導し、好きなフィギュアを選ばせる事にした。


「さぁ、チビ。どんな動物が欲しい? 好きなのを選びなさい」


「えっとね、これとこれと…。あとは、これとこれとこれとー…」


 どんどん買い物かごに放り込まれていく動物達は、気付けば20個を超えていた。

 締めて一万二千円なり(税別)。


「無理、無理、無理…っ! もうちょい減らしてくれ!!」


 チビは最初渋っていたが、何とか10個まで減らし、割引もされていた為か六千円以下まで抑える事が出来た。

 そして、「また今度買おうね」と説得しながら一旦商品を戻しチビを妻に預けると、手早く子供達のプレゼントを買い、見付からないようにブランケットにくるんでから車の荷室ラゲッチへと隠した。


「パパ~、ライオンは? ゾウさんは何処にやったの~?」


「ライオンもゾウも買ってないよ。今頃オモチャ屋さんで寝てるよ」


「え~、あるよ~」


「ないって…」


 ところが帰り道になった途端、チビは物覚えが良かったのか、何度買わなかったと伝えても、納得出来ない様子でしきりに聞いてくる。

 遂に耐え切れなくなった私は、やむを得ず近くの中古ショップへ連れていき、今回買っていなかったオオカミのフィギュアを買って気を惹かせるのであった。

 そしてクリスマスイブでは、ささやかながらホームパーティを開いた。


「去年は寝る前にベッドに行ったら、プレゼントが置いてあったよね?」


「毎回、置いてあるとは限らないだろ。サンタが出発した時間も違うんだし」


 そういう事は覚えているのか。

 私はまだプレゼントを置いてなかったので、適当に理由を付けて誤魔化した。

 やがて、子供達を寝かせる時間になると、二階にある寝室の窓際にクリスマスツリーを設置する。

 無論、サンタクロースへの手紙はそのままにしておく。


「ヤバいよ、パパ! 緊張して眠れない!!」


「ねぇ、パパはサンタさんを見た事ある?」


「テレビや写真くらいでしか見た事ないな。恥ずかしがり屋みたいだから、みんなが寝ないと来ないと思うぞ」


「パパ達も寝ないと来ないの?」


「ん? あぁ、そうだな」


「クリスマスツリーのライトが気になって眠れないよ!」


「明かりがないと何処に子供か居るか分からんだろ? いいから、寝なさい」


「「はーい」」


 こうして何とか寝かし付けると、いよいよサンタの出番だ。


「あなたが一番楽しそうね」


「エンターテイナーが楽しまなきゃ、面白くないだろ?」


「ふふっ、じゃあその調子で最後まで頑張って、パパサンタ! あ、可能だったら写真撮ってきてね~」


「了解! では、任務ミッションを開始します!」


 頭の中で、某有名スパイ映画のBGMが流れてきた。

 足元を立てないよう、階段を昇り二階へ上がると、暗がりの中でそっと寝室へ足を踏み入れ、子供達の枕元へプレゼントを置く為に近付いていく。

 すると、急に息子がモゾモゾと動き出した。


「おわ…っ」


 私は驚いてしまい、何もせずにそのまま離脱しリビングへと戻る。


「もうプレゼントを置いてきたの? 早くない!?」


 思ったよりも早い私の帰還に対し、妻が突っ込んできた。


「いや、まだだ。息子が動いたから、ビビって逃げてきた…」


「はぁ…、何やってるのよ。はい、再チャレンジ、再チャレンジ!」


 私が後ろ手にプレゼントを持ったままなのを見て、妻はため息を付きながらも、もう一度行くよう促してきた。


「へいへい…」


 妻に言われるがままに、再度寝室へ向かうもその足取りは重い。


「はぁ…、滅茶苦茶緊張してきた…」


 子供達が寝返りする度に立てる小さな物音でさえ、一度逃げた今の私にとっては脅威であった。


「よ、よし! 何とか置いたぞ…次は手紙だな」


 私は何とか子供達の枕元に置くと、サンタクロースに書いたていの手紙を回収し、妻に書いてもらった“サンタクロースより”というタイトルと子供達の名前が入ったメッセージカードに差し替える。

 本当は自分で書く予定だったが、あまりにも字が下手過ぎたので、躊躇ちゅうちょして内容だけ考えたのだ。


「カードも入れ替えたし、後は写真だな…」


 私はスマホを片手に、カメラモードを起動し写真を撮ろうとするも、手元が暗くて良く見えない。


「フラッシュはどうやって設定するんだ?」


 パシャシャシャシャシャシャシャシャシャ…ッ!!

 操作方法も良く分からないまま焦っていると、間違って連写モードで撮影してしまったらしい。


「う…うん…?」


 そして、娘がシャッター音に合わせるかのようにうなり声を上げながら寝返りを打ってくるものだから、私は冷や汗をきながら息を殺してジッと鳴りを潜める。

 暫くして娘が再び寝息を立て始めたので、私は任務ミッションを再開し、今度は無事に撮影する事が出来た。

 撮影後、意気揚々としながらも足音を立てないようにつま先立ちで階段を掛け降り、敬礼した後に妻へ報告をした。


任務完了ミッションコンプリートであります!」


「うむ。お疲れ様、サンタさん!」


 こうして何とか任務をやり遂げた私は、子供達が明日の朝に起きた時の反応を想像しながら就寝したのだった。


 クリスマス当日、私は昼近くまで寝てしまい、その目で子供達が起きた時の反応を見る事は叶わなかったものの、妻が言うには大層喜んでいたらしい。

 子供達もサンタクロースがいつ来たのか分からなかったと話し、早くも来年何を貰うか考えている。

 私は、これぞ親としての冥利に尽きると感慨に浸っていた。

 取り敢えず、子供達が完全に信じてないと判断するまでは、サンタを演じるつもりでいる。

 子供達の成長を切に願う反面、純粋な気持ちを忘れないで欲しいという想いもある。

 この二つの相反する感情に揺られながら、私もまた父親として成長していくのだろう。


 私達が過去に置いてきてしまったあの夢や感動を、子供達は今まさに感じている。

 だからこそ、小さい子供が居る家庭やこれから親となるであろう全ての人達に、こう問いたいのだ。



『あなたはいつまでサンタを信じていましたか?』

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