吹き替えが神……「史上最悪のボートレース ウハウハザブーン」

 ――アメリカでも史上最悪と言われる底辺大学、レペットメイン。そこに在学している超絶問題児の大学生のボブは学部長からの脅しと学位取得の褒美に釣られ、何の取り柄もないレペットメイン大学に優勝という名誉を勝ち取るため、問題児揃いの仲間と共に全米で開催される川下り(ラフト)レースへ参加する事になる。しかし、レースに待ち受けているのは激流、妨害、破壊工作、美女との出会い、何でもありの波乱すぎる川下りだった――


 川下りレースに参加する大学生の騒動を描いたコメディ映画。全米の大学対抗川下りレースに優勝して大学の名誉を勝ち取る(ついでに学位も貰う)という何とも微妙極まりない動機の元で参加するボンクラ大学生たちの波乱と笑いを描いている。

 原題は「アップ・ザ・クリーク」で、日本でのビデオ題は「アップ・ザ・クリーク 激流スーパーアドベンチャー」であった。地味で目立たないコメディ映画であるが、テレビ東京という洋画劇場の神様と、めちゃくちゃ尖りまくったテレビ版タイトルと吹き替えが与えられ、長らくネットでネタにされてきた知る人ぞ知るバカ映画としての地位を確立した。


 主人公のボブはボンクラ大学生と呼ぶには足りないほどの極悪大学生で、様々な学校を放校され違法行為にも手を染め、幾人もの学部長をストレスでつぶして来た超ワル野郎で、仲間たちはナード、ナンパ野郎、面白デブ、癒し担当枠にして今作で一番の常識人な主人公の飼い犬チャックなど非常にわかりやすい面子が揃っている。

 そんな彼らと対峙するライバル学校も個性的で、初っ端からルール無視で失格となりレースを台無しにする事に精を出す陸軍士官学校チーム、妨害工作と破壊工作でライバルを蹴落としていく金持ちボンボンのアイビー大学、お色気担当の割りに実は一番まともに川下りしている女子大チームなど個性豊かな面子が揃っている。


 そんなこんなでボートは破壊されるわ、仲間は拉致されるわ、散々なレースになるのだが、主人公たちが低レベルな作戦やその場のノリ、無い頭を絞ったり力技に頼ったりと様々な手を尽くしてレース優勝を目指していくのは笑える。また、終盤になるとちゃんとした普通の川下りレースの映画になったり、やたらスケールのデカい破壊描写まで繰り出されるのは驚きと言えよう。


 B級映画ではあるが、今作を語る上で重要なのが吹き替えの存在だろう。テレビ東京の製作の吹き替えは、「ウハウハで行くか?」「ザブーンだな!」を筆頭とする名訳(迷訳)が連発される極めて内容の濃い物となっており、友人と一緒に酒でも空けながら見るには丁度いい塩梅の下らなくて笑える代物となっているし、恐らく映画の魅力の大半を占めるのもこの吹き替えの魔力だろう。是非とも日本語吹き替えで見てほしい作品だ。

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