ギラつく野郎の破滅の美学……「スカーフェイス」
――キューバからアメリカに追放されたチンピラ、トニー・モンタナはマイアミの裏社会へと飛び込み、成り上がりを目論む。相棒のマニーと共に裏社会で成功を収めたトニーはついに麻薬王として君臨し、権力と金を手に入れる。だが、アメリカン・ドリームを手にしたトニーは次第に転落の一途を辿っていく――
巨匠、ブライアン・デ・パルマ監督作、脚本オリバー・ストーン、アル・パチーノ主演で送るギャング映画。1932年製作の「暗黒街の顔役」をリメイクした作品で、舞台は80年代のマイアミに移している。ギャング・マフィアものの映画としては今もなお語られる金字塔的作品であり、世界でヒットした「グランド・セフト・オート」シリーズにも多大な影響を与えている。
映画はとにかくギラギラした空気を纏っており、マイアミという年中暑そうな舞台に相応しい雰囲気を纏っている。成り上がるために裏社会の仕事をこなし続ける主人公のトニーは、昔風情のギャングであり、アメリカン・ドリームを夢見て、マイアミで血みどろの抗争と麻薬ビジネスに身を投じる。
成り上がりの物語としてはかつてない程の王道ストーリーだ。裏社会の重鎮たちに見出され、その腕を買われながらも、やがて命を狙われる。それを跳ね除けて麻薬組織のボスという椅子を手に入れたトニーは、アメリカン・ドリームを手に入れる。痛快な男なのだ。
ジャクジーの風呂、滅茶苦茶デカい豪邸、数多くの子分、裏社会の太いパイプ、白い黄金ことコカインが生み出す使いきれないほどの莫大な金、そして女。アウトローが夢見る世界をトニーがこれでもかと堪能する中盤は、挿入歌の「push to limit」と合わせて実に強烈だ。
だが、この映画の良い所は主人公が堕ちていく所を克明に描く点にある。恋人、家族らの不和、仕事の不調、そして失敗。階段を転げ落ちるように主人公はどん底へと向かっていく。麻薬に溺れ、ついに進退窮まったトニーに破滅の時が訪れる。
破滅の美学、という言葉があるが今作は一際派手な破滅が描かれる。クライマックスに全てを失ったトニーが見せる足掻き――フルオートの銃撃とグレネードの爆発が奏でる殺戮の銃撃戦はとにかく派手だ。美しさの欠片もない泥臭くギラついた、硝煙とFワードまみれのラストに思わず見とれてしまう事だろう。歴史に残る傑作だ。
余談だがオリバー・ストーンは自身も薬物中毒で、今作の脚本は薬物治療をしながら書いた脚本だったらしい。よく書いたなこの脚本。
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