ソ連のムキムキマッチョマン、国境を越える……「レッドブル」

 ――ソ連で麻薬事業を広げていた犯罪者、ビクトルがアメリカで逮捕される。ソ連はビクトルを移送するためイワン・ダンコ大尉をアメリカへと送る。だが、シカゴ警察のリジック刑事と共にビクトルをソ連へ送還しようとした矢先、ビクトルは警官を殺害し逃亡してしまう。ビクトル逮捕のため、ダンコはリジックと協力し捜査を開始するが――


 1988年、まだソ連が存在した頃に製作された刑事アクション映画。監督は「48時間」「ダブル・ボーダー」のウォルター・ヒル。主演はハリウッドの伝説的アクションスター、アーノルド・シュワルツェネッガーだ。オーストリア訛りの英語が特徴的なシュワを「ソ連人」として配役した異色作であるが、逆にこの訛りを生かした「ソ連人らしさ」が生きているのが面白い。


 東西冷戦末期が舞台だけあり、秘密のヴェールに包まれていたソ連という国が徐々に西側へ素顔を見せていた時代の作品だけあり、ソ連とアメリカという社会体制もイデオロギーも違う国の警官が衝突しながらも互いを認めていくストーリーで、今見ても十分に褪せない題材だろう。

 法律や配慮を無視しまくる強引なソ連式捜査方法に苦言を呈するアメリカの刑事や、逆に資本主義国家での目まぐるしい世界に不慣れなソ連の刑事、というカルチャーギャップに苦しむ姿は流石に時代を感じるが。


 シュワちゃんのアクションも健在で、強力な破壊力を持つポドヴィリン拳銃(デザートイーグルや複数の銃を合わせた架空銃)をぶっ放して、襲い掛かる悪党どもをメッタメタにぶっ倒していく様は痛快で、終盤にはバスによる派手なカーチェイスもあったりとアクション面でも見所は多い。


 キャストも良くて、リジック刑事を演じるジェームズ・ベルーシは皮肉や愚痴をこぼしながらも捜査にあたる相棒を熱演。若かれし頃のローレンス・フィッシュバーンも刑事役で出演している。筋肉隆々のソ連式捜査で悪党をぶっ潰していくシュワちゃんの勇士は言わずもがなだろう。80年代末のシュワちゃんのフィルモグラフィーを飾る名作のひとつだ。

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