大乱闘スカルアイランドモンスターズ……「キングコング 髑髏島の巨神」

 ――1973年、ベトナム戦争末期。アメリカの観測衛星が、南太平洋に位置する未知の島「髑髏島」を捉えた。特務機関のモナークは島の調査を決定し、学者のランダ率いる研究チームと、パッカード大佐率いる軍のヘリ部隊が島へと辿り着く。だが、爆破による振動調査を行っていたチームは突如として超巨大なゴリラ、キングコングの襲撃を受け、部隊は壊滅し島のど真ん中へと取り残されてしまう。ランダに雇われた傭兵のコンラッドやカメラマンのウィーバー、生き残った兵士たちは危険な生物が渦巻く髑髏島から脱出を試みようとするが――


 レジェンダリーピクチャーズが放つ怪獣映画祭りことモンスターバースシリーズ作品。2005年のピーター・ジャクソン版コングから12年ぶりに銀幕へキングコングが現れた、コングのカムバック作品である。これがまた最高のモンスター映画だった。


 本筋のストーリーは、要するに生きて脱出を目指すサバイバル物なのだが「太平洋戦争中に髑髏島へ流れ着いた米軍パイロット」「コングに復讐を誓う狂人の米軍大佐」「島からの脱出を目指す主人公の傭兵一行」の3者のドラマがそこへ絡み、その間にコングが島のいけすかねえモンスターをブチのめすという筋立てである。

 が、肝心の主人公周りの描写がどうも薄く、終始サミュエルが演じる狂人の大佐が「俺ぁコングぶっ殺すまでこの島出ねえぞマザファッカー!」と暴走しまくる下りに飲まれ気味だったかなあという印象を受ける。

 話自体はそこまで悪くは無いけれど……


 で、肝心のモンスター映画部分に関しては加点方式で採点すれば5000点くらいあげたくなるぐらい良かった。キングコングは無論のこと、悪役となるモンスター、スカルクローラーや髑髏島に生息する色々な架空生物含めて造詣の出来が良く満足できた。「メッセージ性とか人間ドラマとかいいんですよ、これは怪獣の殴り合い映画だから!!」という意気込みをひしひしと感じる潔さが最高だったなあ……


 また、モンスター映画らしい「無残に蹴散らされる人間たち」という構図も健在であり、それらの要素も非常に楽しかった。ヘリコプターをドッカンドッカン破壊しまくるコングの勇姿は無論のこと、髑髏島に潜む様々なクリーチャーたちが生存者たちに襲い掛かり、いかなる武器があろうとも人類は彼らの前には無力な存在にすぎない、という描写をありありと見せ付けているし、翼竜に引き裂かれたり、食われたり吹っ飛ばされたり特攻キメようと思ったら完全な無駄死になったりとひどい描写(褒め言葉)が連発されるのも面白い。


 この手の映画の醍醐味である怪獣同士のファイトもかなり多めに取られているので、人間ドラマ部分の弱さを補って有り余るほど本筋部分は満足行く作りになっていたのも良かった。レジェンダリーピクチャーズでは14年版ゴジラや、13年のパシフィック・リムなどの怪獣映画が作られていたが、どちらも夜間のバトルや暗い画面での戦闘が多かったのが不満点ではあったが、今作では夕焼けの中でヘリを蹴散らすコングや、白昼でのコングVSスカルクローラー戦などハッキリした画面での戦いが多かったので満足だったし、ディティールの細かい怪獣バトルを堪能できた部分も評価したい。


 キングコングのキャラクターについても満足いける内容だった。今までのコングと言えば、無理やりニューヨークへ連れ出され見世物にされて最後に殺される悲劇の主役の一面を持ち、ピージャク版では身分の違う恋をしてしまった荒くれ者というキャラ補正までつけられたが、今作は「髑髏島の巨神」というサブタイに相応しい堂々たるモンスターとして活躍している。

 つまりゴジラとタイマン張ってた時のコングと同じで、むっちゃ強い。そして人間の手では倒せないタフなモンスターにして、島を守るという神の存在として描かれる新しいキングコング像を作っている。そのうちまたゴジラと戦う日が来るかと思うと期待に胸が躍る。


 舞台がベトナム戦争末期という点や、劇中の挿入歌の絶妙なチョイスとか、おいしい所を取っていくジョン・C・ライリーとか、モンスターバースのこれからを予期させる最高のエンドロール後映像など他にもちょくちょく大好きなポイントが多く、総評するとかなり満足できる映画だった。レジェンダリーの怪獣映画の今後には大いに期待したい。

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