核戦争の回避はオタクの手に委ねられた……「ウォー・ゲーム」
――クラッキングで新作ゲームを盗み見ては愛用のコンピューターで遊ぶなど、才能を悪い方向に無駄遣いする高校生、デビッドはゲーム目的でクラックしたコンピューター「ジョシュア」で核戦争ゲームを遊ぶ事に。だが「ジョシュア」の正体は北アメリカ航空宇宙防衛司令部(通称NORAD)の戦略防衛コンピューターで、核戦争ゲームは実際の核戦争シミュレーターだった!――
AIが仮想空間で暴走してエラい目になるのを家族総出で止める映画「サマーウォーズ」の元ネタである「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム」の元ネタである映画が今作である。なげーよ。
今でこそインターネットなど通信分野の技術が発達し、ハッキングだのコンピューター、インターネット等という単語が一般に認知されている時代であるが、この映画は1983年に公開された。電子の世界がある生活が当たり前という少年の姿やコンピューターと人の関係を描いた、まさに時代の先駆けとも言える作品である。
映画の公開当事にアメリカ軍が「こういった事態は絶対に起こらない」と念を押して説明しているように、物語の基底にある話はフィクションである。AIの暴走に、事態の切欠となった少年が、巻き起こされるであろう惨劇を食い止めようとヒロインと共に奔走する姿は随分と青春映画らしい構図だ。
とは言え、物事は常に深刻な物として描かれる。1983年と言えばまだソ連がバリバリ現役だった時代。ペレストロイカ前、もっと言うとゴルバチョフ政権前のソ連なのでアメリカもソ連という国家に対してはまだ警戒を続けていた頃だ。こと、ソ連とアメリカの間で核戦争が起こったとしたら……?という話が現実味のある時勢だけあって核戦争という言葉がずっしりと響く。
自分の軽率な行動が巻き起こした悲劇を食い止める方法として、デビッドが取った方法は今目線から見ると「え、そんな事で?」という方法なのだが、これが当時としてはエンタメとして全うな描き方だったのだろうし、この方法でAIをぶっ倒す作品はあまり見ないと思う。今だったら絶対主人公がコンソールを前にキーボードを鳴らしながらプログラムを書き換えたり処理を実行に写す絵になったりするんだろうな。あとこのシーン、めっちゃ画面がチカチカするから絶対部屋明るくしてテレビから離れて見てくれよな。
83年の映画だけあり、いまやすっかりおっさんのマシュー・ブロデリックの若かれし頃の姿を拝む事が出来る。他にも「ザ・ホワイトハウス」でお馴染みのジョン・スペンサー(映画好きにはザ・ロックの偏屈FBIおじさんなら通じると思う)、後にレザボア・ドッグスで強烈な印象を残すマイケル・マドセンも出演している。今見ると中々味わい深いキャスティングだ。
今目線で見ると古いようで新しいような変な映画なのだが、ぜひ前述のアニメ2作の元ネタとして気になった人や、クラシックなコンピューター題材映画が気になる人にはオススメの作品である。
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