第81話

「佐々木?誰だそれは。大魔神か何かか?」


 半分冗談で言ったのだが、どうやら冗談で済むようなことではないらしい。というのも、みくるさんも目を見開いたまま息を止めているかのように固まったままだからだ。ここに来てまさかのキーパーソンの登場か。ちょっと待てよ、今思い出すから…。


「あぁ、違うのよキョンくん。思い出すとかそういうのじゃないの。名前を聞いてすぐ分からない時点で、この話は終わっているのよ」


 朝倉委員長は目を閉じたままそう言った。一体どういう意味だ。その佐々木とかいうやつがいないと何か困るのか?


「現時点では困ることはないわ。けど、将来的に致命的に困ることになる…でしょ?」


 朝倉委員長はみくるさんに目をやった。固まっていたみくるさんははっとしたように朝倉委員長を見返し、こくんと頷いた。やっぱりそうなるわよね、と朝倉委員長は独り言のように口にした。




「この状況を何とかする方法、一つだけ見つけたわ」


 朝倉委員長が突然そう切り出した。あまりに突然だったので、俺もみくるさんも何のことか一瞬分からず、数秒経ってから「「えぇっ!!!」」とハモって叫んだ。


「今まで、高校に入学してからの涼宮さんとどう関わるかばかり考えていたけど、この考え方じゃどうやっても無理よね。あまりにも時間がなさすぎるわ。だから、もっと前から関わる必要がある」


 そうか!一月二月じゃ無理でも、もっと前、たとえば中学生の頃の涼宮と仲良くなれれば!


「いえ、それはだめよ。そんなことをしたら、みくるさんの未来と整合性が取れないわ」


 口を開きかけていたみくるさんは朝倉委員長の言葉に頷いて返す。なんだって?じゃあ一体どうすれば…。


「そう、涼宮さんとの関わりを変える以前に必要なことがあるのよ。変えるべきは涼宮さんとの関係性、つまり涼宮さん自身を変えずに関わりを変えなきゃいけなかった」


 さっぱり分からない。もったいぶらずに早く教えてくれ。


「過去に戻って変えるべきだったのは、キョンくん、あなたの方だったのよ」


 風もないのに、ヒュウと何かが横切ったような気がした。

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