第62話
「どうやら、僕の正体を言ってしまったほうが早いようですね」
しばらく考えていた小泉は、そう口を開いた。ヤバい誘拐犯以外の肩書が他にもあるのか。
「お察しの通り、超能力者です」
「・・・悪い、全然お察しでない」
全世界が停止したかと思った。自己紹介としてはダダ滑りもいいところだ。というか、今まで察するポイントがどこにあったよ。小泉はおや?と意外そうな表情をわざとらしく作ってみせた。
「いつ『実は超能力者じゃないだろうな?』と先に言われるのではないかとヒヤヒヤしていたのですが」
んなこと思うわけがない。思ったとしたらそいつはエスパーかただの思い込みの激しいヤバい奴だろう。というか、え?お前超能力者なの???
「ちょっと違いますけどね。ですが他に適当な言葉もありませんので」
「じゃあ、瞬間移動できたりめちゃくちゃ速く動けたり透視ができたり念力で触らずに物を動かしたり捻じ曲げたりするのは」
「できませんね」
「お前は二度と超能力者を名乗るな!!!!!」
小泉は楽しそうに笑った。なにわろとんねんと問いたい。小一時間問い詰めたい。ちょっとでもワクワクした俺の気持ちを返せ。
「そういう解りやすい能力とはちょっと違うんです。普段の僕には何の力もありません。力を使えるのはいくつかの条件が重なって初めて出来ることなんです」
自称超能力者がまだ何か言っている。超能力者…贅沢な名だね。今からお前の名前は危ない誘拐犯だよ。俺の悪態にも小泉は顔色を変える素振りはなかった。
「まぁ実際に見てみないと伝わらないでしょうね。百聞は一見にしかずと言いますし。やはりお見せしたほうがいいのでしょう」
そう言うと小泉はベンチから立ち上がった。と同時に、公園の入り口から車のクラクションが鳴った。
「ちょうどいいタイミングで出来たようです。向かいましょう」
小泉はクラクションが鳴った方へスタスタと歩き出した。俺の頭には「何が?」と「どこへ?」という疑問が浮かんだが、黙ってついていくことにした。ただ、公園の入口に停まっていた車の後部座席に乗り奥へ座った小泉に、俺は一つだけ尋ねた。
「どこへ行くんだ?」
薄暗い車内で小泉はニヤリと笑った。
「この近くにある、線路沿いの県道まで」
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