第47話

 翌日、登校すると朝倉委員長はほとんどいつもどおりに戻っていた。まだ少し気にしている風だったが、俺にもよくわからないのでどうしようもない。そのまま放課後になり、部室に行くと涼宮がエプロンドレスのメイドさんの格好をしたアサヒナ先輩の写真を撮っていた。お前は相変わらず平常運転で安心するよ。


「どう?一枚500円で売ろうと思うの」


 涼宮が持っていたのはデジタルカメラだった。俺は撮影されたデータを眺める。


「安い、700円は取れる。5枚セットなら3000円」


「オッケー。そうしましょう」


「駄目に決まってるでしょ!キョンくんも適当なこと言わない!!!」


 おぉ、完全にいつもの朝倉委員長に戻ったな。ツッコミのキレでわかるぞ。なんてことを口にすることは当然せず、俺と涼宮は朝倉委員長にしこたま怒られた。



「おや、取り込み中ですか?」


 ぎゃあぎゃあ騒いでいると小泉が部室にやってきた。


「古泉くん、いいところに来たね。この写真いくらなら買おうと思う?」


 涼宮にデジカメを見せられた小泉はしばしポカンとしていたが、メイド姿のアサヒナ先輩の実物と見比べながら、


「そうですね、500円か、1000円か。ところで、朝比奈さんの写真が巷に出回っても、大丈夫なのですか?」


「あ」


 小泉の言葉を聞いたアサヒナ先輩は突然慌て始めた。なんだ、なにか不味いことでもあったのかな。


「写真はついでね。SOS団のホームページに貼り付けてアクセス数をガンガン増やすのが目的よ」


「お前本当に頭いいな!」


「ひょえ!?」


 俺が褒めるのとアサヒナ先輩が悲鳴を上げたのが同時だった。一瞬間を置いて朝倉委員長がカンカンになって怒り出したので、俺は間に入って止めることになったが、事の発端である小泉はいつのまにか部室から姿を消していた。何がしたかったんだ。それはそうと、長門さんも止めるの手伝ってくれよ。なんかしらの宇宙パワーとか使ってさ。なんて事が口から出る寸前まできてたのだが、長門さんは頑なに手元の本から顔をあげようとはしなかった。


 結局、涼宮はアサヒナ先輩の写真をホームページにアップするのを断念させられ、ふてくされたように部室から出ていった。嵐が去ったとばかりにやれやれとため息を付いていると、いつの間にか帰り支度を済ませていた長門さんが部室のドアの前でこちらを振り向いた。


「忠告はした」


 途端に部室にピリッと緊張が走った。しかし長門さんはそれ以上なにか言うこともなく、パタンとドアを閉めて出ていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る