第38話
謎のバニーガールズとしてすっかり認知を受けてしまった二人組の片割れである朝倉委員長は、けなげにも今日もまた俺とともに部室へと顔を出していた。涼宮はというと終礼が終わった途端ダッシュで教室を飛び出していったので、間違いなく例の転校生を捕まえに行ったのだろう。見たところ優男だったし、俺が行かなくても涼宮単独で部室まで引きずってくることができるはずだ。たぶんあいつ俺より腕力強いし。
「涼宮さん、遅いね」
そう言ったのはアサヒナ先輩である。そういやこの人も部室にはずっと来ているな。みくるさん曰く俺を手伝ってくれるそうだが、どうも俺にではなく朝倉委員長と仲良くなりたいらしい。まぁ涼宮を抑えられるとすれば俺ではなく朝倉委員長なのは間違いないしな。そういえばしばらくみくるさんに会ってないけど今何してるんだろう。俺は木の下でアリの観察をしているみくるさんを想像し、さすがにそこまで暇じゃないだろうなと頭を振った。
「今日、一年の他のクラスに転校生が来たそうで、その彼に会いに行ったのかも」
「転校生……?」
朝倉委員長の返答に、小鳥のように首をかしげるアサヒナ先輩。こうしてみていると、どちらが先輩かわからないな。
「へい、お待ち!」
一人の男子生徒の袖をガッチリとキープした涼宮ハルヒが的はずれな挨拶をよこした。
「一年九組に本日やってきた即戦力の転校生、その名も、」
若干の間があった。どうやら続きは転校生自身で言えという涼宮の配慮?のようだが、アサヒナ先輩と朝倉委員長が揃って引いていた。長門さんはずっと本読んでるから知らん。聞いてすらないかもしれない。
「古泉一樹です。……よろしく」
おっと、朝倉委員長たちだけでなく小泉くんも引いているようだ。ヤジでも飛ばそうかと思っていた俺も黙っておくことにした。俺にもそれぐらいの理性はあるのさ。
「ここ、SOS団。あたしが団長の涼宮ハルヒ。そこの四人は団員その一と二と…あぁ、あの二人は団員じゃなかったわ。部外者二名ね。だからあなたは三番目ね」
そういや俺と朝倉委員長はその珍妙な団とは別のグループだった。なんだかすっかり忘れていたが。さて、小泉の立場からすると俺と朝倉委員長はどういう存在として見えているのか心配だな。
「入るのは別にいいんですが」
転校生の小泉…何だったかな、上の名前はラーメンが好きそうって覚えることに成功したんだが、下の名前は忘れてしまった。まぁその小泉が落ち着いた笑みを絶やさずに言った。
「何をするクラブなんですか?」
なんだ、そんなことも説明せずに連れてきたのか。俺はビラの入った紙袋から一枚を抜き出し、小泉に向かってすっと差し出した。
「こらバカキョン。それは依頼者向けのビラよ。この団の紹介文じゃないわ」
そう言われてみればそうだった。まあこれを読んでだいたい察しがつきそうなものなんだがな。と思って周りを見渡すと、俺以外の誰も分かっていないようだった。長門さん、顔だけでいいからこっち向けてくれ。正面から見た記憶が忘れつつあるから、このままだと長門さんがス○夫みたいな存在になってしまう。
「教えるわ。SOS団の活動内容、それは、」
大きく息を吸い、演出効果のつもりかセリフを溜めに溜めて、そして涼宮は真相を吐いた。
「宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶことよ!」
全世界が停止したかと思われた。というのは嘘で、俺は単に「やっぱりか」と思っただけだった。しかし残りの四人はそうもいかなかったようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます