第28話

 涼宮のついでに俺まで無茶苦茶怒られた(大事なことなので二度言った)。親にだってこんなに怒られたことないぞ。ましてや同い年の女子に。


「また余計な邪魔を…」


「何か言った?」


「ええ、ええ。言ったわ。だいたいあんたここに何しにきたのよ!」


「あれだけ女の子の叫び声が響けば誰だって気が付くでしょ!!!」


 トータルパワーでは朝倉委員長より上の涼宮も、激怒した人間相手だと分が悪いらしい。確かに鍵をかけたはずなのになどぶつぶつ呟いていたが、それ以降は黙っていた。


「ん、これは…?」


 涼宮にとって分が悪い相手…予測不可能な涼宮をコントロールできる…これだ!


「朝倉委員長!」


「あぁん?」


 えぇ…。あぁそうか、今俺も怒られてたんだった。まあいいや、ちょっと付き合ってくれ。怒られ中だったが、手を取って部室の外に出た。


「頼みたいことが…どうした?」


 朝倉委員長は俺の顔を見ずそっぽを向いていた。顔も見たくないくらい怒っているのかな。そういや怒られているときの俺は床しか見てなかったもんな。


「別に何でも…それで?」


 さっきの雷はどこへやら、すっかり大人しくなった。手を掴んだままだっただったことを思い出し、なんとなくその手を放した。


「委員長も毎日文芸部に一緒に来てくれ」


「…あぁん?」


 朝倉委員長の態度が豹変した。何このギャルゲーの選択肢を間違ったみたいな反応。難易度が高すぎるだろ。


「嫌よ。わたしを便利なトラブル解決道具とでも思ってるの?」


 だいたい見透かされていた。いや、確かにそういう面も期待してたけど、本音を言うとこの部室内に味方が一人くらい欲しいんだよ。涼宮派による包囲網が完成しつつある。あと一人向こうについたら囲碁的に死んでしまうんだ。


「そんなこと言われたって、こっちにはこっちの事情があるのよ」


 朝倉委員長はそう言って困ったような、けど迷っているような顔でまた断った。あれ、なんかもうちょっと押したらこれいけるのでは?俺は周りを見回し、通路には俺と委員長しかいないことを確認した。


「お願いします涼子さん」


 俺は両手で拝んで頼んだ。朝倉委員長はぐぅと言いながらのけ反り、しばし頭の中で何かを天秤で比べているような様子で、ややあってからため息をついた。


「たまになら」


 俺はパチンと指を鳴らした。そうこなくっちゃ。朝倉委員長はまた大きめのため息をついた。何をそんな心配を…あぁ、これから自分が苦労するヴィジョンでも幻視したのかもしれない。

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