第58話 モブの葛藤
元々はモブだし、もしかしたら大会に向けて、行き詰まっているかもと思っていたが、そこまで切羽詰まっているとは思ってなかった。
体調を崩していた故にレオンとの朝夕の稽古もなく、彼が思い詰めていたことに気が付かなかった。
まさかレオンが最近来たばかりのジークの成長速度に焦って無理な稽古をしているなんて思いもしなかった。
今のこの時期に、レオンに寝返られたら困る。
「レオン、今日はおやつ一緒に食べれる?」
「フローラさま、あの」
「1人だけ抜けるのが嫌なら、そうね、そこの2人も魔力持ちでしょう?一緒にいらっしゃる?」
稽古場に向かえば、大人の騎士たちは体調を尋ねてくれて、ついでにレオンの位置も教えてくれた。
中にはレオンのことを耳打ちしてくれる親切な人もいる。
レオンはお嬢様の騎士になるべく奮闘しています、と。
その当人であるレオンは太刀筋にも乱れがあるし、何より氷の剣を使いすぎているのか魔力切れを起こしかけている。
確実に稽古のやり過ぎだ。
息切れするレオンの傍らで、いくつか年齢が上の見習い騎士とジークが打ち合っている。
「レオン、魔力切れ起こしてるんだ。今日はこれで上がれ。お嬢様をこの寒い稽古場に立たせておくつもりか?」
「それはっ」
「それに、物理的に守るだけじゃ騎士は務まらないぞ」
「……わかりました。フローラさま、今伺いますので、暖かいところでお待ちください」
教官を務めているのだろう騎士の助言もあり、レオンはこのあと休憩になるようだった。
他の人も目もあるからレオンに丁寧な言葉と、丁寧なエスコートで稽古場から出された。
これはこれで気持ち悪い。
私だっていつもあの稽古場で剣を現出させていたのに納得いかないが、レオンを稽古場から出すための方弁なのだろう。
私の方も病み上がりに鞭打って動き回っているのが祟っているらしく、目眩がする。
レオンが着替えて戻ってくるまでの間を、ぐっと目をつぶってやり過ごそうとしていた。
「お、お嬢様!?」
ダメだ、思ってたより消耗していたらしい。
足元が抜けて、世界が回転しているように感じる。
聞きなれないが、聞いたことのある声が戸惑いがちに私を呼んでいるような気がした。
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