第54話 イケメン奴隷購入
やることがないと暇をボヤいた私がいけなかったのか、やけにキラキラをまとう奴隷に落とされている少年を見つけてしまった。
想像ついているかもしれないが、不遇の攻略キャラ騎士ジークだ。
ジークのルートを進めると戦乱に入り、もれなく国境の砦ラングレーは隣国と交戦状態になり、フローラはその戦乱の最中落命する。
ちなみに、好感度が低いとヒロインも死ぬスリリングなルートになっている。
「お目が高いですな。火属性への適性が高い子どもです。借金奴隷ですから特に素行にも問題ありませんよ」
今は魔法を抑えるための手錠を付けられたまま、専用の檻に入れられている。設定ではフローラよりも年上だったから、10~12歳くらいだろう。
俯いて地面を見る様子は中身が成人している私からすれば痛々しさを覚える。
ただし、ジークは戦場となった国そっちのけで、ヒロインとキャッキャウフフする攻略キャラだ。
ジークにとっての悪党、奴隷として買い上げた末端貴族と奴隷商人を倒して、戦場で武功をたてて貴族になり、めでたしめでたしとなる。
ジークが出世するために起きたのかというぐらい都合の良い戦争が起きる。
そして、ナレーション1行でラングレーはひどい目に合う。
「話すことを許可する。あなた名前は?」
「…ジーク」
「そう」
魔力の割合としてやはり火の力が強いのだろう、ジークの赤色の目が私に向けられる。
だが、この話、そもそもの悪役貴族がラングレーで、主人が私なら?
ヒロインを死なせないために何か補正が働く可能性がでてくる。私が狙われるにしても、魔法を解くためにジークとヒロインが近づいてくることは間違いない。
「戦争はじまって、いつの間にか悪党死んで、自由になってたわぁ」では二人の愛が育まれない。
「剣をまだ覚えていない上に、剣術を教えるにはもう年齢が高いわ」
「それでは…」
「いいえ。この値段は高いと思うのよ。お値段次第かしらね、ねえ、アントン?」
「かしこまりました。交渉はわたくしめが」
他にも魔法を持たない兵種の奴隷を購入するのだから、もう少し安くなるだろう。
奴隷は借金奴隷と犯罪奴隷がいる。
基本的にラングレーで購入するのは借金奴隷。戦が近いとなれば即戦力で、犯罪奴隷を購入することもあるが、子どもは普通買わない。
だからジークは売れ残って変な貴族に買い叩かれて、めんどくさいことになった。
「なぜ……」
「ラングレーのためになると思ったから買ったわ。
ジーク、あなたは強くなる。そして、強くなったら武功を上げてちょうだい。そうしたら、平民の身分を私からあげる。それで、ラングレーの騎士とする。
すべてはあなたの努力次第、不貞腐れて、穀潰しになるようなら容赦しないわ」
攻略キャラに優しくしたところで、ハリス同様にジークはヒロインが近寄ってきたら裏切ってこちらに剣を向けるのはわかっている。
とりあえず目の届く範囲にいてくれた方が良いというのと、ヒロイン補正で悲劇回避できるかもという打算塗れな考えで、購入を決めた。
まあ、強くなるのはわかってるし、子どもを買うには年齢が高いし、安くなることを考えたらお買い得だろう。
それに、勝手に聖女と崇められても恩人と奉られても困る、ジークも大概重くてめんどくさいキャラだった。
至って普通の購入者として振舞った。
ラングレーで行っている騎士の修練、泊まり込みの騎士見習いに混ぜるように近くの騎士に命じて、他のお買い物に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます