【読切】籠の鳥

作者 穂紬きみ

20

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★★★ Excellent!!!

 この物語を表す言葉を探してみました。

 悲しい、寂しい、開放感、温かい、カタルシス…浮かぶ言葉は数あれど、どれも一つだけで物語を象徴させることができません。

 人間関係は、決して複雑ではありません。

 登場人物の心情も、裏を読まなければ本心が分からないような、そんな悪人は一人もいません。世継ぎの問題にせよ、国のことにせよ、皆、当たり前の人間が、当たり前の考え方をし、当たり前のようにそれぞれ食い違った…とも考えられます。

 だから皆、喜怒哀楽のある人間である、と感じられるのです。

 しかし、この喜怒哀楽が難しい。相反する感情があり、逆に補い合う感情もある訳ですから。

 だから、一言で表すことができないのです。

 最後まで読んだ時、読者の胸に残る印象も、人それぞれなのでしょう。

 私は、そこにこそ、作者が物語に込めた主題があるような気がしてなりません。

 短いからこそ、読者の抱く感想を全て受け入れ、内包てくれる、そんな度量のある物語です。

 一言の通りです。物語にある曖昧さは、機微にもなるし、読者や登場人物に対する優しさでもあるのだと思います。

 内包してくれる…ああ、籠の鳥とは、読者の事でもあったのかも…私は、そう感じてしまいました。