世界を創りし偉大なお方3

皆様こんばんは、お久しぶり。もう覚えてくださっていますよね?


私は、プリティーかつチャーミングでちょっと照れ屋な神様の、巫女。つまり妻。


マイ・フォーリンラブ☆な旦那様は、世界を創りし偉大なお方。


さて。私は今、少し困っております。


今年で17になる私たちの娘と旦那様が、大喧嘩をしているのです。


「この、不良娘が~~~!!」


旦那様の美声が、家中に響き渡りました。続いてそれに負けじと、私によく似た声が響きます。


「うっせんだよこのクソ親父!!」


日頃から娘の言動に思うところがあったご様子の旦那様。


娘が今日、なんの連絡もなく帰りが遅く、しかも娘の見た目が少し変わっていた

ことで、ついに堪忍袋の緒が切れたのでした。


「なんだその髪の色!」


「てめ~の髪の色より普通だろ」


「これは地毛だ馬鹿!!」


ちなみに娘の髪は真っ金々、旦那様の髪は綺麗な若葉色です。


「おまけにピアスまで勝手に空けて!!」


「うっせ~な。この方がイカしてんの!ちなみに、へそにも空けたから」


娘はTシャツの裾を上げ、私たちにお腹を見せました。


なるほど確かに、ピアスがついています。


「親からもらった体をなんだと思ってるんだ!!」


「あたしの体なんだから、好きにしていいだろ!」


「そんなものつけて何が楽しい!!」


「親父の尻尾よりマシだっつの!」


「これは体の一部だ馬鹿!!」


旦那様は世界を創ったお方ですから、人間とは姿が違います。


そういえばこの子がお腹に宿った時、自分の見た目が遺伝して、そのせいでこの子が虐められるのではないか、と、とても心配していましたっけ。


「ていうかお前タバコ臭くないか!?」


「最近吸い始めた」


「馬鹿野郎!! 何考えてんだ!!」


「いつ世界が滅びてもいいように、あたしはあたしの好きに生きんだよ!」


「馬鹿なこと言ってるんじゃない!!」


旦那様が腕を振り上げます。


それはだめ。私は旦那様と娘の間に入りました。


「暴力は、だ、め、で、すっ」


語尾にハートをつけてそう言って、旦那様の鼻を人差し指でちょんと突きます。


「……」


旦那様と娘は沈黙。そのまま30秒ほどの時が流れた後、旦那様は大きく息を吐き出しました。


「そうだな。暴力はよくない。お前のかわいさで目が覚めた」


流石は旦那様。物分かりがいいです。私はくるりと娘の方に向き直りました。


「タバコはだめです」


思ったより低い声が出てしまいました。失敗☆


「苦くてマズイからやめようと思ってたっつの」


娘はそう返事をすると、自分の部屋に行ってしまいました。


とりあえず今日の喧嘩はこれで終了。やれやれ、です。


まあそのうちあの子もわかってくれるでしょうから、暖かく見守りましょうね? 旦那様♪



杞憂、という言葉がある。あれこれと必要のないことを心配すること、らしい。


なんでも昔の王様が、空が落ちて来るんじゃないかと馬鹿げた心配をしていた、という話が元になっているとか。


それを聞いて思う。


それはホントに、心配する必要のない事なのかと。


空が落ちて来ない、大地が崩れない保障なんて、どこにもないと思う。


その心配を笑えるのは、みんな知らないからだ。


この世界が出来たのは本当にただの偶然で、救われたのもまた、偶然。


だから、またいつ滅びるか分からない。


皆様こんにちは初めまして。実はあたしは、カミサマの娘。


あたしの父親は、世界を創り、また世界を救った偉大なおカタ。


だからこそ知っている。本当は、神様なんてちっとも頼りにならない、って事。


みんなが万能だと思いこんで信仰している神様は、実は妻とイチャイチャすることしか能がない役立たずなのだ。


だから今日世界が終わっても、明日世界が終わっても。


後悔しない、生き方をしなくちゃ。

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