世界を創りし偉大なお方2

 「お願いします、旦那様。一緒に、いきましょう……?」


 「やだって言ってんだろ~が……」


 上目遣いでお願いしても、旦那様はきいてはくれません。


 「でも、一人でいくの、寂しいです……」


 「いつも一人でやってんだろ」


 「でも……ね?」


 こんなに懇願してるのに、どうしてきいてくれないのでしょう……?


 「そんなかわいい顔されると迷うけど……」


 旦那様は少したじろぎましたが、ついに叫びました。


 「オレは人前に出るのとか嫌いだし無理!!

  めっちゃ上がり性だし夢壊すだけだし神託告げに行くとかい・や・だ!!」


 「むぅ」


 まぁ、わかりきった答えだったと言えば、わかりきった答えだったんですけどね。


 でも。


 これで最後に、なってしまうのですから……

 

 *


 皆様こんにちは。


 私は神に仕える巫女。つまり妻。


 私の愛しい旦那様は、世界を創りし偉大なお方。


 なのですが。


 私にとって旦那様は旦那様。


 神様だろ~が大魔人だろ~が関係ないくらい、私は旦那様を愛しちゃっています☆


 ずっとずぅっと、ずぅぅっとずっと。


 一緒にいたいと思うほど、大好きで恋しちゃってて愛しちゃってます♪


 なのですが。


 世界はもうすぐ、滅びるそうです。


 この事は、国のトップシークレット。


 けれど、みんなうすうす、気付いています。感じ取って、しまっています。


 世界の綻びに。崩れていく、音に。


 「……偶然、出来ちまっただけの世界だからな」


 ぽつり、と旦那様が呟きました。


 「ほんとに偶然で、ほんっとたまたまだったから……」


 だからもともと、長く保つはずなかったんだろうな、と。


 寂しそうに。悲しそうに。


 「……やっぱり、最後くらい民の前に出ませんか? 

  その方が皆勇気づけられますよ」


 もう一度頼んでみても、旦那様は首をふります。


 「大勢の前で“大丈夫だ。世界が滅ぶなんてありえない”とか大嘘つくの、無理。

  謝る事なら……出来る、かもしれないけど」


 「謝る?」


 世界を創りし偉大なお方にして、プリティーでチャーミングでちょっと照れ屋な旦那様が、一体何を?


 「だって、こんな風に終わるなら、最初からなかった方がマシだった

  だろ……?」


 泣きそうな、顔。


 その方が悲しくないからというわけですか。確かにそう思う人も、中にはいるのかもしれません。


 「でも少なくとも私は、旦那様に会えて幸せでしたよ」


 「サンキュ」


 本当ですよ?ホントにほんとに本当、ですからね?


 ちゃんと分かって、下さっていますか?


 *


 (あぁ~くそ、どうにかなんね~のかよ!

  あん時みたいになんか起きれよどうにかなれよ!)


 ……


 ………


 …………


 (ん……?)


 ……


 ………


 (もしか、して?)


 ……


 ………


 …………


 (やっべすっげぇ!オレすっげぇ!)


 ……


 ………


 …………


 (どうにか、なった!!)

 

 *

 

 皆様こんにちは!


 私は神に仕える巫女。つまり妻!


 私の愛しい旦那様は、世界を創りし偉大なお方。


 なだけでなく!!


 世界を救いし偉大なお方!!


 あぁ旦那様!


 あぁあぁあぁあぁ旦那様!!


 大好きです大好きです恋してます愛してますほんっとぉ~に、愛してます!!


 ずぅっと一緒に、いましょうね!

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