公募について・後編

※ここに書かれているのは、あくまでも私の個人的な考えです。

※下読みさんによる選考ではなく、編集者による選考のことを想定して書いています。


 通過率が少しでも上がるかもしれない方法。

 それは、「応募先のレーベルの研究」です!


 ……あ、待って。引き返さないで!


「何を今さら」「当たり前のことを言うなど」と言う声がたくさん聞こえてきそうですが……これ、意外としていない方が多いんじゃないかな、という印象がありまして……。


 カクヨム経由で応募ができる賞が増え、応募が郵送のみの時代では難しかった「他の方の応募作を読むこと」ができるようになりました。その中に、「応募先のレーベルの作品を読んだことがないのかな……?」と感じるものがいくつかありました。レーベルの対象読者層からはずれているもの、レーベルカラーを無視したもの、いわゆるカテゴリーエラーと呼ばれるような作品です。

 これは、ものすごくもったいないことだと思います。一つの作品を書き上げるのって相当な労力が必要なのに、応募先のことをよく調べもせずに出してしまったら、決して短くはない選考期間がまるごと無駄になってしまいます。結果発表後に他の賞に出すにしても、作品の鮮度が下がる!

 私も過去によく研究しないまま応募してしまい、労力と時間を無駄にしてしまったと感じたことがあります。もっと研究していればこんな題材で書かなかったのに!と。

 せっかく努力して書き上げた作品です。どうせなら、一番高い評価をしてくれるところに出したいじゃないですか。


 一番いいのは、自分の好きなレーベル、よく読むレーベルの主催する賞に出すことなのかな、と。

 でも自分が好んで読むジャンルと書くジャンルが違う、ってこともありますよね。普段自分が読まないジャンルの賞に出す場合は、少しでもそのレーベルの研究をしたほうがいいんじゃないかな、と思うのです。


 この「レーベル研究」の具体的なやり方として、私がやってみた方法……を、もう少しきちんとさせたものをご紹介します。


 ①まず自作のジャンルを把握。そのジャンルの賞をすべて調べる。

 ②それぞれの賞を主催するレーベルのサイトを見て、どんな作品が出ているのかを大まかに把握する。

 ③実際に買って(借りて)読んでみる。←なるべくたくさん!時間がなければ、レーベルの顔になっているヒット作を数作。

 ④レーベルごとにどのような特徴があるのかわかるはずなので、自作との相性が一番よさそうなところを選ぶ。既に書き上げている場合は、その作品が出版されるとしたらどのレーベルからが一番しっくりくるのかを考える。


 ②③の過程で、各レーベルの色のようなものがなんとなく掴めてきます。するとそのレーベルが次に求めているものが、ぼんやりと見えてくるような気がするのです。

 ④においては、「自分がそのレーベルの編集者だったら」という視点で考えてみるといいかもしれません。どんな作品を出したいと思うのか。居並ぶヒット作にもうひとつ加わるとしたら、それはどんなものになるだろう? そんなふうに想像することで、作品の方向性が決まってきたり、構想の段階であれば、着想がわいてくることもあるかもしれません。


 次に、作品を書くにあたって意識したこと、意識したほうがいいのではないかな、と思ったことを。


・モチーフと要素

 個人的に気をつけたのは、応募先のレーベルの既存作と「モチーフ」がかぶらないようにすること。かつ、既存作(人気作がよいです)にある「要素」を意識することです。

「モチーフ」について。例えばライト文芸だと大体どのレーベルからも後宮ものが出ていますが、既に後宮ものの看板作品があるような場合、そこに同じ後宮ものをぶつけるのは、戦略上あまりよろしくないのでは……と思います。

 よっぽど差別化できる要素があればいいのかもしれませんが、既存作と読者を分けることになりかねませんし、作品を売る側からしたら、どれだけよく書けていたとしても受賞作としては選びづらいのではないかと思います。

 同じような出来のものがあったら、「新しいもの」「オリジナリティのあるもの」のほうを選びたいと思うものなんじゃないでしょうか。

「要素」について。人気作を数作読むことで、そこに共通しているものが見えてくることがあります。それが「要素」です。

「イケメンとの恋愛」「知識チート」「マスコットキャラ」「テンション高めの文章」などなど……これらはそのまま取り入れることもできますし、ひねって別の要素にすることもできます。

 これがあるのとないのとでは、やはり違ってくる……ような気がします。過去のヒット作という前例が、保証のような役割を果たしてくれるんじゃないか……という期待を抱いてしまったり。題材が斬新で挑戦的であればあるほど、こうした要素が作品に安心感を与えてくれるんじゃないかな、と勝手に思ってます。


・ヒット作の把握

「作品」といえど、出版されたら商品です。出版社としては、売れるものを選びたいでしょう。レーベルごとのヒット作も重要ですが、ジャンル全体を通して今どんな作品が売れているのか、ということは、知っておいたほうがいいのかなと思います。

 対象読者が何を求めているのか、どんな要素に惹かれるのか。それを把握することは、受賞後の「相手」である読者のことを視野に入れた作品作りにつながります。

「自分が思う面白さ」にこだわることはもちろん大事ですが、それと同じくらい「読者のための面白さ」を追求していくべきなんじゃないでしょうか。読者の「面白い」を知るためには、やはりヒット作の研究が必要だと思います。


・想定読者層の意識

 上と関連して、そのレーベルが想定している対象読者の性別や年齢をしっかりと意識したほうがいいと思います。特に児童向けの場合は、扱える要素に制限があります。恋愛を描く場合はどこまで書いていいのか、どこからがダメなのか、同性愛的な要素や死の取り扱いについてはどうなのか、そのあたりも研究を通して理解することができます。扱おうとしていた要素に少しでも不安がある場合は、避けた方が無難かもしれません。


 無理やりまとめると、つまりはこういうことです。


『相手(レーベル)の「好み」を研究し、それに合わせて服装(要素)やメイク(表現)を工夫する! ただし使用アイテム(モチーフ)は他の人とかぶらないように!』


 レーベルを研究し、それに寄せて書く……いろいろなところで見かける言葉ではありますが、以前の私は、この言葉に出会うたびに不安を感じていました。なんだか自分本来の持ち味が失われてしまうような気がして、逆にあんまり研究しない方がいいんじゃないか、とすら思っていました。

 でも、今は変わりました。要素や表現って、案外簡単に変えたり付け加えたりできるものなんだ、ということに気づいたのです。中身(テーマなど)は自分そのもの、ありのままでいい……というよりそうでなければならないのだから、持ち味が失われることなんて心配しなくていいんじゃん!と。

 大事なのは、書きたいものを書くこと。でも「相手」のことを知って書くのと知らずに書くのとでは、おのずと作品の色や見た目が変わってくるのではないかと思います。色や見た目が相手の好みに近いほうが、選んでもらえる可能性が上がるんじゃないでしょうか。


 ……と、さんざんえらそうに書いてきましたが、私はこれら全部をきちんとしてきたわけではありません……。

 応募前に実際に読んだ作品は数作、しかもほぼ一巻のみ。あとはためし読みや書店でのパラパラ読みで、文体や雰囲気をなんとなく把握したのみです。すみません……。私の受賞は完全に運ですね。


 最後になりますが、ここに書いたのは私の個人的な考えです。

 当たり前のことを書いている、と思われる方はもちろん、間違っていると思う方も、大事なのはもっと他のことだとおっしゃる方もいらっしゃると思います。

 私がこれを書いた理由は、「もったいない」をなくしたいからです。

 とてもよく書けているのに選考通過することができなかった応募作、というのを、これまでにいくつか見てきました。

 そのたびに、もったいないと感じます。そして、すごく悔しいのです。世の中にはいい作品がたくさんあふれているのに、実際に本として出版されるのはほんの一部。それも選ばれるかどうかには運の要素が大きくて。

 私は創作に関してはまだまだヒヨッコなので、そういった面での具体的な助言はできません。

 ただ、過去の私のように、時間を無駄にしてほしくないのです。

 作品を書き上げたら、少しだけ離れて、ちょっと考えてみてほしいのです。

「この作品は別のレーベル向きなんじゃないか?」「このレーベルの読者はこの作品を面白いと思ってくれるのだろうか?」「受賞して出版されるとなると、このサイトに載る。浮かないだろうか?」と。

 もしかしたら、もっと相性のいい別の相手がいるかもしれません。相手の好みに合わせる工夫を、付け足すことができるかもしれません。

 受賞や書籍化はゴールではなく、その先には出版社とのお付き合いが待っています。お互い気持ちよくやり取りをするためにも、「相手を知る」というのはとても大切なことなんじゃないかな、と思います。

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