キャラクターについて

 キャラクターの造形に関して、気をつけていることを簡単に書いていきたいと思います。


《目次》

 1.美点と弱点

 2.バックストーリー

 3.二面性

 4.葛藤と痛み


 1.美点と弱点


 長所と短所のことですが、長所は短所にもなるし、短所は長所にもなるので、美点と弱点という言葉にしてみました。

 美点はキャラクターの優れた性質や能力のことです。他のキャラクターにはない秀でた部分ですね。

 弱点は、美点より重要です。弱点があるからこそ、キャラクターに人間味が増します。同時に、読者の共感を誘います。ものすごく腕のいい狙撃手なのに、女が苦手とか。学校始まって以来の天才と言われているのに、一日十四時間以上寝ないと倒れる体質だとか。

 優れた美点とのバランスを取る意味でも、この弱点は絶対に必要です。

 大事なのは、完璧な人間なんていないということです。トランプのジョーカーのようなキャラクターは、便利なようでいて、その世界を壊しかねない危険をはらんでいます。ストーリーには障害がつきものですが、どんな障害が出てきたところで「あのキャラなら簡単に解決できるんじゃね?」となってしまうからです。


 2.二面性


 魅力的なキャラクターは、相反する二つの側面を持っています。

 これは「モブサイコ100」のモブや霊幻がいい例ですね。(ご参考:「モブサイコ100の凄さ」https://kakuyomu.jp/works/1177354054887938778/episodes/1177354054889206512

 人間は、一言で言い表せるような単純な生き物ではありません。多くの、時には矛盾する側面で構成されているのが人間です。

 普段見せている側面とは全く違う、逆ともとれるような側面が、何かをきっかけとして現れる。

 人間は平面ではありません。「奥行き」があります。違う側面を描くことで、そのキャラクターに「奥行き」が生まれます。


 3.バックストーリー


 これはほんとに、あるとないとじゃ物語の広がりが断然変わってきます。

 物語が始まる以前に、キャラクターがどんな経験をしてきたのか。そこには喜びもあるでしょうが、痛みもあるでしょう。経験は人間を作ります。

 キャラクターの性格を考えているとき、「このキャラはきっと親に大事にされてきたんだろうな」「子どものときは外より家の中で遊んでいたタイプだろうな」などという思いが自然と出てくることがあります。これをつきつめていくと、性格のみならず、物語そのものに影響を及ぼすバックストーリーが出来上がります。


 これは特に、悪役に必要だと強く思います。

 ずっとモヤモヤしていたことに、ディ〇ニー映画に顕著な勧善懲悪があります。

 美人とビーストの作品、モンスターの会社の作品などにおいて、悪役は途中で消えてしまうのです。

 クライマックスの最中で、文字通りいなくなってしまうのですよ!

 もちろん突然消えるわけではなく、ヒーローに倒される、ドジを踏んで取り返しのつかないことになる、などという流れはあるのですが、それにしたってその後一切そのキャラについて触れられないんですよ。まるでその世界から完全に存在がなくなってしまったかのように。

 当然ながら、彼らにだってそれまでの人生が存在します。その中でさまざまなことを経験し、学び、感じ、それが今につながっているはずです。

 けれども彼らは最初から「悪」以外の何物でもなく、主人公たちの障害となる以上の役割などはなから必要とされていないかのように放り出されてしまいます。


 これはもしかしたら、善悪をはっきりと区別するキリスト教的な価値観なのかもしれません。

 世の中には完全な「善」も「悪」もないはずです。物事と言うのはとても複雑であって、それを表す言葉は不完全なものです。概念は言葉にした段階で嘘になります。言葉そのものは妥協の産物でしかないのですから。


 ある海外リアクターさんの、とあるアニメに対する反応をYouTubeで見ていたときのことでした。そのアニメのエピソードでは、「悪役」のバックストーリーが語られていました。

 それを見て、彼女は言いました。「どうしてこんなものを見せるの? かわいそうだと思ってしまうじゃない」

 そう、悪役に対して「かわいそう」だと彼女は思いたくないのです。なぜなら彼は悪役であって、同情の余地などないキャラクターなのですから。

 彼女は、悪役が倒されるところが見たいのです。スッキリしたいのです。

 もちろんこれは一個人の考え方に過ぎませんが、私はこの捉え方をとても残念だと感じました。

 主人公側から見たらそのキャラは「悪」かもしれない。けれどもこの世界って、人間って、そんなに単純なものでしょうか。


 こうした理由で、私は「とにかく悪。根っからの悪。悪以外の何物でもない」というキャラクターが出てくる作品を見ると、少し悲しくなってしまいます。

 そんな人間、この世に存在しないと考えているからです。

 悪役が「道具」としてではなく、物語に深みを与えるための主人公の鏡像や分身のような形で使われていたりすると、うれしくなります。


 この悪役のバックストーリーについては、みりあむさんの「キャプテン・フック」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054887256534)がとても秀逸な例です。これを読み、私はバックストーリーの重要性を改めて認識しました。


 4.葛藤と痛み


 葛藤は「弱点」や「二面性」、痛みは「バックストーリー」に関わってきます。

 こうしたいのに、できない。こうなりたいのに、なれない。したくないのに、しなければならない。

 それが「葛藤」です。物語を進める推進力にもなります。

 バックストーリーは、キャラクターの人生です。人生は、経験の連続で出来上がっています。経験から人は多くのものを得、そして失います。

 キャラクターがそれまでに得てきたもの、失ってきたもの、それに伴う感情や考え方、独自の哲学。

 その中でも、人が大きく突き動かされる感情は、喜びよりも悲しみだと考えています。大きな悲しみは、人を変えます。

 キャラクターにとって一番つらいことは何か、つまりそのキャラクターにとっての「痛み」は何か、と考えることは、有用です。

 それがキャラクターの弱点にもなるし、ストーリーの流れに危機を生むこともできるからです。

 この「葛藤と痛み」という要素を付与することで、操り人形ではなく、自分で考え、自分で動く、人間らしいキャラクターが生まれると考えています。


 というわけで、簡潔に書こうと思ったのにまた長くなってしまいました。

 皆様の創作において、何かのきっかけになれば幸いです。

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