【番外】アイディアが降りてくるとき・その2

 前回の「【番外】アイディアが降りてくるとき」を投稿した後で思い出したので、追加でアップしたいと思います。


・旅(非日常)


 私には、ちょっと不思議な記憶があります。子供の頃の思い出だと思うのですが、現実の出来事だったのかどうかわからない記憶です。


 海沿いの町に家族で旅行に行った夜、その町でお祭りがありました。日が落ちてすっかり暗くなった町。旅館にほど近い住宅街の坂道に立っている私。下り坂のむこうには海が見えます。

 そこを、何人かの子供が通り過ぎていきました。小学校高学年くらいの男の子に、低学年くらいの女の子たち。彼らは祭りに行くらしく、浴衣を着ていました。男の子が着ているのは、夜に溶けるような紺色の浴衣。

 そのとき、思ったのです。見知らぬ町にも、こうして暮らしている子供たちがいるのだと。この子たちにとってこの町は「見知らぬ町」ではなく、「いつもの自分たちの町」なのだと。

 当たり前のことなのですが、私はこの「海の見える町での生活」を想像し、世界とはなんて広いのだろうと感じました。この世界には、私が見て知っていること以外に、なんてたくさんのものがあるのだろうと。


 旅には、このように、「いつもの見方」から脱却できる効果があります。旅そのものが非日常です。普段眠っている自分の感覚が驚くほど鋭敏に立ち上がるあの時間が、私は好きです。



 大人になると時間が経つのが早く感じるのは、さまざまなことに慣れてしまったせいだと言います。いろいろなことを知り過ぎて、新鮮な驚きを感じることができなくなってしまうのです。

 子供のように、小さなことでも新鮮さを感じてときめくことができる感覚を持ち合わせていれば、ささいな日常も「小説の種」だらけになるのでしょう。


 今自分が生きているのは「つまらない日常」ではなく、「新鮮さに満ちた非日常」なのだとまず思うことが、子供の感覚を取り戻す手助けとなるかもしれません。

 毎朝起きるたびに感覚をリセットできたら、すてきですね。

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