深い印象を受けた作品~漫画編~

 私は、小説より漫画で育ったと言ってもいいくらい、漫画をたくさん読んできました。

『ドラえもん』、『南国少年パプワくん』、『機動警察パトレイバー』、『東京BABYLON』、『幽遊白書』、『るろうに剣心』、『ライジングインパクト』、『天才ファミリー・カンパニー』、『俺物語!!』、『聖☆おにいさん』、『進撃の巨人』そして『ゴールデンカムイ』など、面白い漫画作品はたくさんたくさんありますが、特に印象的だったもの、他にはない個性を持っている作品を、厳選して紹介したいと思います。


・手塚治虫『ブラック・ジャック』


 手塚治虫は、「漫画は三題噺である」と言っていました(確か)。ブラック・ジャックも、三題噺的手法で作られていると聞いたことがあります。

 初めて読んだのは中学校の図書室でしたが、とにかく面白かった。少し怖い描写もあるのだけれど、それがまた当時の私にとっては魅力的で。毎回毎回、違う舞台や登場人物を使い、よくもまあこれだけ面白い話が思いつくものだ、と感心したのを覚えています。必ずしも毎回手術が成功するわけではなく、「命とは何か」「人間とは何か」という深い問いを提起するような、重い終わり方をするエピソードも少なくありません。

 エピソードの内容だけでなく、展開の速さも見事です。少ないページ数で、徹底的に無駄を省き、物語を見せる手法。見習いたいものがあります。


・『無能の人』などつげ義春作品


 大学生のときにはまりました。「ねじ式」「ゲンセンカン主人」「紅い花」など有名な作品は知っていて、漫画版の純文学だなあと感じていましたが、その他の作品も本当に面白い。同時に、貧乏というものがとても恐ろしくなりました。

 漫画のコマ割りは、小説における「文体」に近いものだと思っていますが、つげ作品はこの文体が抜群に個性的で、はまってしまうものがあるのです。捨てゴマの使い方、どこかとぼけたような顔の登場人物に、一見意味のないようなセリフ。描くものを選び抜くことで、選ばなかったものが浮かび上がってくるような、不思議な印象を受けます。

 多摩川で拾った石を売るという「無能の人」シリーズもいいですが(奥さんが「私もういやだァ」と言って石を投げ捨てるところと、子どもの無邪気さや子どもらしさがすごく印象的)、「夜のふくらみ」のような夢を漫画化したものも、大好きです。


・『わたしは真悟』など楳図かずお作品


 楳図作品は、いろいろ読んでます。『漂流教室』、『イアラ』、『洗礼』、『14歳』、『神の左手悪魔の右手』、『赤んぼう少女』、その他短編など。

 どれも本当に衝撃的で面白いのですが、一番は『わたしは真悟』です。

 これほどまでに、ひとつの強い「思い」を描いた作品は、古今東西のどんな文学作品にもないんじゃないかと思えるほどの、すごい作品です。

 しかもその思いの持ち主は、人間ではなく、機械。産業用のロボットです。

 読んでいない方のために多くは語りませんが、とにかくすごい作品なのです。こんなに胸の深い部分にぎゅうぎゅうと突き刺さる作品を、私は他に知りません。

 楳図かずお作品に特有の「笑い」もところどころに描かれています。彼は「恐怖と笑いは似ている」と言っています。怖い場面も、一歩引いてみるとなんだか笑えたりするんですよ。同時に、笑いも違う角度から見れば、恐怖に変じることもあります。


 その他の作品も、文句なく面白く、怖いです。『神の左手悪魔の右手』はとにかく痛い描写満載で恐ろしく、『14歳』のラストは、「こんなん有り?」ってくらい、衝撃的。すごい作品でした。


・高橋留美子『めぞん一刻』


 この作品に関しては、多くを語る必要はないですね。私が人生で読んだ漫画の中で、ベストワンといえる作品です。以前同じ職場にいた年下の男の子も、同じことを言っていました。

 とにかく、面白い。キャラクターの心理がよく描けていて、うまくいきそうなのにすれ違ったりなどの障害も多く、この後どうなるのかと目が離せない。

 連載を開始したとき、作者はまだ二十代前半だったらしいです。恐ろしい。


・雲田はるこ『昭和元禄落語心中』


 アニメから入った作品です。数話見て、「天地がひっくり返るくらいものすごい作品」だと感じました。二人の男の、落語を通した約束と生き様。昭和という時代、恋、嫉妬と憎悪、狂おしい程の愛、名前をつけられないほどの激しい思い。

 すぐにコミックスを全巻揃えました。元々落語が好きですし、出てくる演目も知っているものが多かったので、楽しめました。

 若き菊比古が、「何のために落語をやっているのか」と自身に問うシーンが好きです。この場面を経て、彼は本当の落語家に生まれ変わります。

 これはもはや文学。二人の男に一人の女って、やっぱりいいですね。物語が生まれる。私もこの構造で一本書きたいと思っていたところでした。

 声優の演技がすばらしいので、ぜひアニメも見てもらいたいです。椎名林檎の作った主題歌「薄ら氷心中」も、世界観によく合っていてすばらしい。


・『それでも町は廻っている』など石黒正数作品


『それでも町は廻っている』は、基本的には女子高生を主人公にした日常ものですが、作者はミステリーが好きな方なんでしょう、日常のささいな謎に関するお話が多いです。でも、それだけじゃない。宇宙人、幽霊、死後の世界、パラレルワールド、運命改変ボタン(?)と、非常に幅広いエピソードがあります。キャラクターたちがとても個性的で、恋愛も描かれているので、それも楽しめます。

 何よりすごいのは、エピソードの時系列がバラバラなこと。主人公が髪を切るエピソードがあるのですが、読み進めていくうちに、エピソードによって急に髪が伸びたり短くなったりするのです。いつの間にか学年が変わっていたり、先輩が卒業していたり。そのエピソードだけの登場人物だと思っていたら、他のエピソードでもちらりと出てきたり、わき役だった人が掘り下げられたりなど、面白い仕掛けもたくさんあります。

 私が好きなのは、主人公の弟と妹である、タケルやユキコのエピソードです。二人とも小学生なのですが、その描かれ方がリアルでとってもかわいいのです。タケルは途中でエビちゃんという彼女(?)ができるのですが、女子のほうが精神的な成長が早い点についての描き方がうまく、とても面白いです。ユキコも、言動がとにかくかわいくて面白いです。


 この人のものは、他の作品も面白いです。特に『外天楼』は驚きました。読み始めたときは、まさかあんな着地点に到達するとは思いもしませんでした。すごいです。


 どちらの作品も、なんというか、いわゆる天才にしか描けない作品だと感じました。この人は、本物です。


  *


 まだまだ面白い漫画はたくさんあります。後日、追加する可能性あり。

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