構成について

 ここでは、「テーマと物語と描写」において書いた三つの要素、「物語」にあたる、「構成」について書いてみようと思います。


 私に関して言うと、原稿用紙150枚を超える長編(この枚数だと中編?)小説を書くようになってから、まだ十年ほどしか経っていません。しかも書いていたのは純文学。面白くなかったとしても、ある程度構成が破綻していたとしても、「これは純文学だから!」と言い張ることで、なんとか言い逃れできるジャンルです(いや、できないか……)。

 児童向けのものを書くようになってから、この「物語の構成」について悩むことが多くなりました。何しろ、気の赴くままに書いていればよかった純文学とは違い、エンターテインメントですから。しかも大人向けのものより、わかりやすくなければいけない。


 以下、物語の「構成」という問題について、本を読んだり、実際に書いたりしている中で学んだこと、気づいたことについて、ざっくりとまとめてみたいと思います。


 ※注意※

 以下の内容は、エンタメ作品を書き慣れている方であれば「そんなこととっくに知ってるわ」、という内容だと思われます。初心者及び、「書き出したはいいけど続きが書けない!」と悩んでいらっしゃる方向けです。


【その1 着地点だけは決めておく】


 私は、小説のプロットを作りません。作れないのです。「面白い筋立てを作る」という才能が、全くないのです。

 作家には、2つのタイプがいると思います。最初から最後まで細かいプロットを立て、その通りに書いていくタイプ。もう一つは、あらかじめざっくりとした流れや設定のみを考え、後は書いていく中で登場人物に物語を動かしてもらい、その運動性を楽しむというタイプ。

 私の場合は、後者にあたります。

 最初のタイプの場合はいいのです。苦労なく書けるとは言いませんが、少なくとも、「この後どうなるか作者にもわからん」状態でハラハラすることはないんじゃないかと思います。

 ただ、私のように、書きながら考えるという二番目のタイプには、ちょっと問題があります。物語の自由度は広がりますが、そのぶんどこに行ってしまうかわからない危険性があり、小説としてのまとまりが損なわれるおそれがあるのです。

 この「どこに行ってしまうかわからない」という不安をなくすには、最初に物語の着地点を決めておく必要があります。


 小説を書き始めるとき、私はざっくりとした設定をまず考えます。時代、舞台という小説世界と、そこで起こるエピソードの性格ですね。

 例えば、「現代の中学校を舞台にした悪霊退治もの。入学したばかりの主人公が、とあるきっかけで変人集団に巻き込まれ、異世界で悪霊狩りをするハメになる」とか、こんな感じですね。書き終わったばかりの小説の設定です。この設定を元に、実際に私がどのように執筆していったのか、過程をなぞっていきたいと思います。


 設定が決まった後、私は実際に冒頭部を書きながら主人公の骨格を決めていきました。その他の登場人物についても、その場面にどんな人物が必要なのか、を考えながら書き加えていきます。

 主人公については最初に決めたのは、主にその過去や性格についてです。この場合は、「小学校時代に黒歴史がある主人公。普通の生活を目指したいあまりに、変人との接触は避けている」。このくらいです。性格、家族構成、趣味、そういったものは、書き進めながら考えていきます。(ですが、こういったキャラクター設定は、最初にきっちり考えておいたほうが、最後まで矛盾が出ずに描写できるので、そのほうが望ましいと思います。)


 ここまでで小説の設定を決め、冒頭部を書きました。遅くともこの時点で、着地点を定めなければなりません。


 私がこの小説で考えた着地点はこうです。


「生徒に憑いていた悪霊をみんなで協力して倒す。その後、主人公は変人集団改め大事な仲間たちと悪霊狩りを続けていく決意をする」


 これだけ決めておけば、あとはこの着地点に降りることができるように書いていけばいいので、方向性が決まってきます。この場合、冒頭部以降、私の考えた必要なエピソードは、以下のとおりです。


(1)

 ・「悪霊」の存在する背景についての説明

 ・「変人集団」の成り立った背景

 ・「悪霊が憑りつく生徒」の登場

 ・「悪霊を倒す」方法や条件について、実戦などでの描写

(2)

 ・「主人公の黒歴史」による思考への影響と、その後の変化

(3)

 ・主人公と「変人集団」との関わりを描写し、一人ずつ掘り下げていく


(1)で挙げたのは、着地点に到達するために絶対に必要なエピソードです。これは削れません。

(2)は、この作品のテーマに関わって来るエピソードです。なくても物語としては成り立ちますが、これがなくては小説と言うことはできません。

(3)は、着地点に到達するためのものでも、テーマに関わってくるエピソードでもありません。(1)と(2)が作品の骨であるなら、作品の肉、厚みとなるものです。肉が適切についている作品ほど、深みが増します。


 着地点を決めたことにより、このように必要なエピソードが自然に浮かび上がってきました。実際には、このようにあらかじめ書き出したわけではなく、書きながら考えていったわけですが。


 着地点を決めることは、「書くべきこと」についてはっきりさせるという効果があります。これは物語の骨となる構成を形作るのに、とても有益です。


【その2 推進力となる要素を早めに入れる】


「推進力」とは物語を動かす力でもありますが、読者に最後まで読ませる力でもあります。この先どうなるのだろうか、とページを繰る手を止まらなくさせる、重要な要素です。

 私は、次の要素を物語の推進力と考えています。


 ・魅力的な謎

 ・主人公の目的及び動機

 ・主人公の困難な状況


 謎については、その謎が難しいほど、読者はその答えを知りたがります。「犯人は誰か」ということだけでなく、「クラスの人気者は何故ある日突然学校に来なくなったのか」とか、答えを知りたくなることならなんでもいいわけです。


 主人公の目的と動機は、復讐劇が一番わかりやすいでしょうか。仇を倒すことが目的であり、仇が仇になった所以が動機になります。上に示した悪霊退治の話における、「黒歴史をかなぐり捨て、普通の中学生になりたい」という主人公の決意も、これにあたります。


 一番よくあるのは、「主人公の困難な状況」でしょうか。読者の同情を誘うようなエピソードから始めることにより、主人公に感情移入してもらいやすくなります。その後も立て続けに困難を主人公にぶつけ、あわやというところで克服させ、最終的に困難な状況から見事に抜け出し、大成功を収める。映画でよくあるパターンですね。


 こうした要素を早い段階で入れることで、読者はその作品の行き着く先を理解します。「謎が解ける」「目的が達成される」「困難な状況から抜け出す」……これがいわゆる、カタルシスにつながるのでしょう。


 これを入れることによって、「問題」とそれにぶつかる主人公、という対立構造が生まれます。基本的に、すべてのエンタメ作品はこの対立構造を持っているのではないでしょうか。


  *


 というわけでまた予定より長くなってしまいましたが、このへんで終わりにします。

 次回以降、「文体について」「会話文について」「推敲について」などを予定しています。書けるかなあ。

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