ジャンル

児童向けというジャンル

  *初めての児童向け小説奮闘記*


 寝る前に、小学生(低学年)の子供に本を読んでいるときのことでした。

「これ……私にも書けるんじゃね?」

 そう思ったのが、児童向け小説を書くきっかけでした。


 とりあえず、書いてみた。

 結果。

 あまりの難しさに悶絶しました。


「わかりやすく、シンプルに」。この児童向け作品の鉄則を実現することの、なんと難しいことよ。

 純文学では評価されるかもしれない様々な要素……例えば「含み」や「解決されない謎」、「複数ありえる解釈」などは、児童向けにはご法度です。

 表現をぼかしにぼかしまくり、「あとは読者が自由に感じて考えてくれればいいや」という作品ばかり書いてきた私にとって、児童向けの小説を書くというのは、ひのきのぼうでラスボスの城に突っ込むような、無謀な挑戦でしかなかったのです。


 文章だけではありません。何よりも苦労したのは、字数の調整でした。

 賞の既定上限ギリギリの70000字ほどの作品になりましたが、その倍以上は確実に書いています。

 当初、物語中盤にさしかかったところで50000字越え。「こりゃあかん」と思って筋を大幅に作り変えるも、結局オーバー。

 今度は人物の設定を変え、エピソードをまるまる削ることで、なんとか字数を収めることができました。そのために途中の章も相当書き換えました。


 このように苦労して作り上げた作品が、「書道グラマーと夢の女王」です。


 娘の感想→「悪くないけど、グダグダ説明ばっかりでわけわかんなくなる」


 削りに削ってこれですよ。

 どんだけだよ。どんだけ難しいんだよ、児童向け。特にファンタジー。

 ファンタジー小説における世界の説明って、どうすればいいんでしょうね。ひたすらセリフでしゃべらせましたが、その部分がとっても長くなってしまうんですよ。


 ちなみにこれを書く際、私が参考にしたのは「大長編ドラえもん」でした。

 あれは、大体が「のび太が日常の世界から抜け出し、違う世界へと冒険に行く」という話じゃないですか。宇宙、魔界、地底、動物の星などですね。

 これらは、「その世界の住人」の一人と友達になり、その住人によって世界の説明がなされる、という形が多いです。それを参考にしたのですが、ドラえもんのようにはうまくいきませんでした。

 私は物語を作り慣れていないため、どうも設定を作り込み過ぎてしまうようなのです。設定に頼ろうとしてしまっているんですね。


 世に出ている児童向け作品は、どれも要点を押さえた無駄のないコンパクトさ、そして何より面白さを備えています。

 無駄のなさ、面白さ。そのどちらも、今の私には足りていません。

 まだまだ、修業が必要です。


  *昔を思い出してみる*


 児童向け小説を書くにあたり、自分が小学生のときにどんなものを読んで楽しんでいたのか、どんなものを読みたいと思っていたのか、について、ちょっと思い出してみました。


 小学校低学年のときに読んでいたのは、笹川ひろしのドッキリふたご名探偵シリーズや、ズッコケ三人組シリーズ(ファンクラブにも入ってました)。後はシートン動物記とか、海外の名作などですね。


 その後、私は漫画へとシフトします。ドラえもんは元々読んでいたけれど、それに加えてセーラームーンやパプワくん、幽遊白書など。いろいろ読みました。特に幽遊白書はハマりましたね。世界の設定はもちろん、キャラクターや、小学生にはちょっと難しいセリフの数々にも魅力を感じていました。


 高学年のときは、スニーカー文庫や電撃文庫を読んでいました。あかほりさとるや中村うさぎの作品ですね。ゴクドーくん漫遊記というのがあり、これがすごく面白かったんです。主人公なのに不潔で金に汚くてスケベで自分勝手で……という、それまでにはないタイプのお話だったので、とても衝撃的だったのです。お金のために、何のためらいもなくヒロインを人買いに売ってしまったりするし。当時まだライトノベルという言葉はなかったけれど、これらはそれに近いのかな?

(ていうか今調べたら、アニメになってたんですね。しかもゴクドーくん役、石田彰って! すげえ!)


 で、ここで「児童向け」というジャンルについて、改めて考えてみます。

 一口に児童向けと言っても、実はこの中にも細分化されたジャンルが存在します。「児童書」と「児童文庫」では、毛色が全然違います。

 低学年のときに読んでいたのは、いわゆる「児童書」です。ズッコケ三人組も、このくくりに入ると言っていいでしょう。

 しかし、私が今書いているのは、児童文庫として出版することを前提とした小説です(賞が取れれば、の話だけど)。児童文庫はレーベルごとにカラーが違いますが、一般的な児童書とは違い、かなりラノベに近いものだと考えています。私が高学年のときにはまっていたゴクドーくんなんかは、やはりこっちに分類されるものでしょう。

 今の児童文庫は、言い換えれば「子どもが安心して読めるラノベ」、と言えるかもしれません。児童文庫って、すごい可能性があると思うんですよ。児童文庫として出ているものなら、親は検閲せずとも、安心して子どもに買い与えて読ませることができますよね。

 角川つばさ文庫でもハルヒや森見登美彦の作品なんかが出ていますが、すごくいい試みだと思います。これまでの児童文庫の常識にとらわれず、「子どもに読ませたい本」をどんどん出していってほしい。

 そして、できることなら作者としてそこに加わって、子どものために書いていきたい。

 これが、私が児童文庫を書く原動力になっています。

 この「子ども」には、一般的な子どもという意味も当然ありますが、「自分の子」や「子どもだった自分」も含まれています。


 小学校高学年から中学にかけて、子どもの心はものすごく成長します。

 同時に、それまでに生じなかった悩みがたくさん出てきます。特に私の場合、人間関係。誤解されたり、意図していないのに傷つけてしまったり、一日でクラス内の自分の立ち位置や居場所が変わったり、なくなったり。

 初めて直面することばかりで、どうしたらいいのか、非常にとまどったことをよく覚えています。特に女子は、いろいろとトラブルが多発する時期なんですよね。

 しかも、こういうことって、親に言えなかった。なんだか、すごく恥ずかしくて。心配させたくないっていうよりも、親に言うことで、それが「家族や学校を巻き込んだ大問題」になってしまうかもしれない、というのが怖かった。言わなければそれは自分の中だけにとどまって、努力することで「気のせい」と思い込むこともできたから。


 あのとき私が知りたかったこと。教えてほしかったこと。かけてほしかった言葉。

 そういうものを、作品の中に入れていきたい、と思っています。

 作品を通して、子どもたちの「生きる力」の一部になりたいのです。


 ちょっと高すぎる目標かもしれませんが、このことをいつも胸に抱きつつ、なんとかあがいてみたいと思います。

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