過去編【絶級ティーチャー】その④
しくった。
一言で言うとしくった。なんと、巫くんに私の『2人を鍛えて戦わせて勝った方を敵にしよう』作戦がバレたのだ。
彼は、紅くんのことまで知っていた。
これについては本当に反省せざるを得ない。私が巫くんに渡した『具現蒼穹』は渡した当時は雑魚い防御能力だったが、シャレにならないぐらいのチートに成長していた。もはやほぼ全能の私にも手のつけようがないほどに。どうしてそこまで能力が強化されたのかはわからないが…いや、おそらく彼と相性が良かったんだ。もっと、『ダーク・バランス』を、『歪んだ自己犠牲』をちゃんと調べていれば、それか、もう少し理解しようとしていれば、…もしくは彼を侮らず、目を離さずちゃんと監視していればそんな事態にはならなかったろう。
しかしながらそれは失敗でもあり、成功でもあった。
というかそもそも、失敗はありえない。
彼は『ダーク・バランス』だから、たとえ計画がバレても反発せず従ってくれる。それに、この旅の、この度の目的は『数瞬驚くこと』なのだ。そういう風に見れば、彼に計画がバレてもそれは予定調和ではないが期待通りだ。
なぁんて。
その時の私はそんなことを考えていた。自分の失敗を良かったものにしようと無意識に必死だった。依然失敗は継続しているというのに。
では、私のした真の失敗とは何か。
ひとえに、彼に『味方された』ことだ。
私は敵にするつもりだったのに。
彼によって改造された能力『具現蒼穹』のチートさを、私は理解していなかった。考えてもみてほしい。私に味方する…私の失敗を黙っててくれる、つまりは私のご機嫌をとることが、この世界に存在するにあたってどれだけ強い防御になることか。
私の固有能力は『ラインバース』。
『名付け親』とも呼ばれる。効果は、可能性を見出すこと。不可能を可能にする、ということだ。おかげで私はほぼ全能だ。
そんな私を、味方につけたのだ。『具現蒼穹』は。
この時点で、計画は破綻した。
私は計画を作り直すことにした。
とは言っても。敵ができたわけじゃないし、私は別段困っていなかった。2人が1人になるだけだから。
そしてそのまま、決戦の日はどんどん近づいてきた。
そして前日。
巫くんと私は日本に帰ってきた。
日本では、春休みが始まっていた。
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