第一話【技術使いは登校する】その⑥
〈14-3〉
水筒、教科書、筆箱ならびに筆記用具を新調した。(金はある。俺は昔死亡扱いになった時から、社会に出ない代わりに補助金をもらえるようになったのだ。因みに昨日の骨折も治療してもらった。黒の実験場に墓場が近かったからだ。しかしまだギプスをはめている。)例の彼、『虐待の技術使い』佐谷鉈士くんに廊下でぶっ壊されたからだ。俺はそのせいか清々しい気分になった。
学校へ着いた。俺がホームルーム教室に入ると、そこには30人の仲間達がいた。
「…!」
「やっと来やがった…」
「薙紫てめえ一体何をしやがった!」
「なんのことかな」
おやおや、これがクラスメイトというものか。なかなか上々。教室に入っておはようと言われるのは初めてだったが、これはいいものだと思った。
「言ってねえよ!俺らが学校に来てるのはお前が何かしたからだろつってんだよ!」
「…確かに俺は叶屋さんに君らの住所を調べてもらい、朝赴いて感情操作して君達を学校に来させたけど」
「ほら見ろ!」
「そうした甲斐があったよ」
「は?」
「だってほら、みんな学生らしく教室で仲良くしてるからさ」
「どこがだよ!」
口ではそれしか言わなかったが、俺はこう言いたかった。
“お前ら覚悟しろよ”
“規則正しく暮らしてもらうからな”
“……これから、よろしくね。”
というわけでこれから技術使いのみなさんには俺のクラスメイトとしてちゃんと登校してもらうことにした。技術使いは登校する。
彼らは俺に何か言いたげだったが、
「みなさん!今日も元気に生きましょう!」
という、教室に入って来た担任キャンディ先生の一言で、席に付かざるを得なくなったのだ。さすがは達成使いだ。
先生は次の休みの時俺に、
「よくできました」
とこっそり言ってきた。あの人にはなんでもお見通しのようだった。
〈5-1〉
クラスメイト確保完了。
共通の敵を作ることでその他を団結させるというのはまさに俺が嫌う方法ではあるが、そしてよく使う方法ではあるが、まあ今回は仕方がなかった。
『それ』を最も得意とする巫を救う為には、それへの理解も必要になるだろうから、そういう点でも間違った判断ではなかったと言えるだろう。
それなりにクラスでグループが出来てきたら、俺がそのまとめ役になればいいだろう。
ところで。理事長がクラス復活のお礼として気を利かせて腕を完全治療してくれ、予定より早くギプスも取れた。
が、しかし。
俺たちは新たなる壁にぶつかっていた。
なんと。その理事長から驚愕の一言を頂いてしまったのだ。
「書類はいらないとは言ったが、ある程度の条件を満たしてもらうことにした。今更ながらすまない。
条件①は顧問と副顧問をつけること。
条件②は派手な活動をしないこと。
条件③は男女比を考えること、だ。
よろしく頼む。」
一応理事長の気持ちはわからないでもない。クラスメイトが暴れて世界を滅ぼそうとしたという経験を理事長は持っているから。
しかし。
迷惑だった。
言ってしまえば迷惑だった。
が、一応ある意味俺を信用してくれている理事長を裏切る訳にもいかないし、俺たちはなんとかして顧問と副顧問を探さなくてはならなくなったのだ。
「ああああああああああああああああ」
リリーは叫ぶのであった。
青春は続く。
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