新しい道 6

 USBを見ながら脳に中に時々稲妻のようなものが走る。これは記憶が戻ったというものではなく、繊細に組み立てられた事実から生み出されてくるもののようだ。カオルの中に入った時に無意識に差し込む向きを変えるような行動だ。どこが深く彼女に届くか体が憶えている。

「今日で最後ですね?」

 第1総務課長がコーヒーを入れて入ってくる。

「第2課長をどう思っていましたか?」

「そうですね。焼き餅をしばらく焼きましたわ。重要なことは頭取は何も私には話されませんでしたから。それでいつの間にか会長の耳になっていました」

「銀行再編はどこまで進みましたか?」

「名前は言えませんが相手も決まっています」

「それは今回大蔵省が言ってきている相手と?」

「同じです」

「頭取の予定の道筋ですね?」

「会長は?」

「最初は抵抗を試みられましたが無理だと判断したようです。Nは総理ですね?」

「会長も?」

「このUSBを見てから確信されてようです」

「会長は今後どうされたいのですか?」

「頭取が自分の描いた絵をもう自分では歩けないだろうと。その代り会長がその道を歩こうとされています」

「どうして?」

「道はもうやも得ないが、銀行の先君の魂だけは残したいと。新堂さんは?」

「これからは全く別な道を歩きます」






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