歪める 3

 今日は1階のレストランに制服の警官が張り付いている。マナージャーはどこまでを話しているのだろうか。それとカオルはどこに姿を隠したのか。今姿を隠すのは彼女にとって不利だ。今一つ見えない。

 検察官室に入るとどこか騒がしい。

「先程福岡で『白薔薇』のママが任意出頭に応じました。ITMファイナンスの焦げ付いたラブホテルを価格の2割ほどで任意処理をしたようです。これは社長にとっては非常に不味い。向こうでも検察が今調べておますので連絡を取りながら午後は進めていきます。ところでママが面白いものを提出しました」

 ファックスで送られてきたものを机に載せる。これは私のパソコンにあったITMファイナンスの融資のリストだ。どうしてここにある。

「これはママがあなたから預かっていたものだと言っています。総額の不良債権の7割が集まっています。再建の後ろにあなたの得意の暗号がついています。Iというのは伊藤です。ここにあるSはさしずめ社長のことですね。ISとあるのは双方が係った?SとISでも300億はあります。でもこの時期にママがこんな行動に出たのかが分かりませんね」

「ママはどう説明してるのですか?」

「伊藤と確かに組んでいた時期があると言ってますが、頭取からあなたの資料を見せられて諫められたと言っています。それにあなたを殺そうとした伊藤を恐れたと」

 どうやら頭取の指示でカオルは動いているようだ。

「だが私はあなたのNの人物に興味を持っています。ママはどうしても頭取からNへの繋がりを隠そうとしているように思うのです」

 そう言いながらファイルを拡げて、

「これは捜査秘密ですが、伊藤の架空名義口座が見つかっています。50億ほどの金が一度この口座に入って、Tの印で半分は出金されている。今残高はほとんど残っていませんが。Tは頭取ですよね?」

 返答は期待していない。

「これを受けた口座はまだ残念ながら見つかっていません。頭取にもこの話はしましたが知らないとだけでした」

 どうも検察はかなりのところまで詰めてきている。








 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る