歪める 2

 翌朝検察のあのビルに呼ばれた。前回受けた検査官と違う。

「私は東京から来ました。『白薔薇』のマネージャーからお話を聞いていました。ママはどこに出かけたのか今は不明です。どうも色々な人から話を聞いてきましたが、あなたがキーマンのように思うので是非とも会ってみたかったのです」

 事務官が調書のファイルを順番に並べてからパソコンの前に座る。

「あなたとママは伊藤が引き合わせたとマネージャが言っていますが?」

「記憶にないです」

「そうでしたね。その頃は伊藤とママの関係は終わっていて頭取がママのパトロンになっていた。でも一度も店には顔を出さなかった。頭取がママの部屋に来る時は必ずあなたが先に店に現れる。そう証言しています」

 ページを繰りながら返事は求めず顔色だけ見ている。

「あなたは頭取の連絡係のようだったと。例の3人が写真を写した日、あなたは店に現れていない。と言うことはママが社長と寝たのは伊藤の依頼で頭取は絡んでいないと」

 私は記憶がないから反応もしない。

「マネージャーは伊藤がよく取引先をママに紹介していたと。その頃あなたもよく伊藤と飲んでいたようですな。ここからは今の記憶で聞いてください。黒サングラスの男はあなたを車でぶつけた?」

「はい」

「今あなたは総合的に判断して誰の指図だと思っていますか?」

「伊藤だと」

「なぜ伊藤だと?」

「これは『白薔薇』のママに直接聞いたのです。金を貰っていた係長がママの部屋に入った私をガス栓をひねって殺そうとしたと」

「ママの部屋にどうして入りました?」

「分かりません」






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る