歪める1 

 ビデオの1部があの記者のネームで公開された。テレビでもぼかして放映し、西成の飲み屋街でも話題騒然で検察が現物を証拠物件として提出を要求した。あのビデオにはたっぷり伊藤の指紋がつけられている。すぐにITMファイナンスの社長も呼び出されている。だがカオルが見つからない。

 サエがその週刊誌を見て今朝涙を流していた。カオルが社長のものを屈んで咥えている。

「そこまでしないとダメだの?」

 昼にノミ屋で見たことのある刑事が事務所に現れて取調室に任意で連れて行かれた。

「この男知ってるな?」

 番頭の写真を見せる。

「番頭がな、あんたのことをしゃべっている。関東のやくざから狙われていたと」

「それは事実です」

「番頭はな、記憶が戻っていると証言してるんやがな?」

「それはないですよ」

「だがな、彼奴はあんたに恨みを持っていてな、暇を見ては事務所に張り込んでいた。この写真の男は誰や?」

 マネージャーが車で迎えに来たところだ。番頭はどこまでしゃべっているのか。その時急に戸が開いてスーツ姿の男が顔を出した。刑事は軽く頭を下げると出ていく。

「話は検察が続けて聞きます。あなたは『白薔薇』のママと何度か会っていますね?」

「・・・」

「この男は東京の『白薔薇』のマネージャーです。すでに検察に呼んで聞いています。大阪のホテルの売買の時に偶然に会ったと言っています。それから3度車で運んだと言ってます」

 3度?東京へ行ったことなどは数えていない。こういう時は迂闊にしゃべらないことだ。

「マネージャーはあなたが頭取の依頼を受けて伊藤や『白薔薇』のママを調査していたと言っています。今話題のビデオは伊藤が社長をはめるために取ったと証言しています」








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