戸惑い 6
サエが子供を産んだという噂は町中に広がっている。この発生元は約束していたやぶ医者のものようだ。腹痛と飛び込んできたサエがその日からつわりを起こして翌日出産。どうもやぶ医者が隣の兄ちゃんに故意に話したようだ。この町は噂に尾ひれがつくことこの上ない。兄が寝ている妹を犯したと異母兄妹も故意に飛ばされている。私はちょっとした犯罪者のように白目で見られている。
今日は姉さんに散々嫌味を言われて、痛風で病院に行っている親分を置いて、地上げの短期貸付の抹消手続きに昼から信組の応接室に到着した。
「思ったより早かったですね?」
「ああ、ITMファイナンスの影響や。短期資金が底ついてきてる。売り手も妙に心配して粘らんようになってると言う話だ」
スーツ姿でも派手な赤いネクタイの若頭が笑う。取引が終わって司法書士は法務局に出て行き、銀行員は返済の処理をしている。部屋には不動産子会社の社長だけである。
「伊藤はどうなるんですかねえ?」
「これは噂やが関東やくざに沈められたという噂だ」
「そんなことってあるんですか?」
「よくあるさ。俺だっていつ鉄砲玉に狙われるか。伊藤のように派手にやったら消えるしかないわ。しゃべると困る人が仰山いてる」
と言って携帯を取る。
「これからカラオケに行くから車を回せ」
と言って切ってから、
「ママあんたに気があるみたいや。今夜は付き合ってやってな」
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