向き合う 7
「今日は『白薔薇』のママの指示ではなく自発的に来ました」
初老の男性が珍しく歩いて事務所を覗いた。それで商談に使う喫茶店に案内する。明るいところで見ると表情に元女だった感がある。それに気付いたのか、
「元々私は伊藤の店でママをしていました。年を取って男に戻りました。ニューハーフは年を取ると惨めなものです」
カオルもサエもそれを口にする。
「ところでママの話ですが、実は頭取との話はそんな簡単なことではなかったのです。それをしっかり理解してもらわないとママが大変な危険に状態に陥ります」
「頭取とは話ができたと?」
「いえ、そんな生易しい話ではなかったのです。あなたの部下が頭取の指示で閉じ込めた部屋のガス栓をひねった話は聞きましたか?」
「ええ、それで逃がしてくれたと」
「それで今度は頭取にママが監禁されたのですよ。電話がかかってきて私が迎えに行った時は全身ムチの傷で2日も熱を出して寝込みました。その後ママはその時に雲隠れしていた伊藤を綱渡りで関東やくざに引き渡したのです。これも頭取との約束事だったようです」
「頭取と関東やくざは?」
「関係があります。関西やくざとも。でもその仕事をしていたのがあなただったのですよ」
「とんでもない銀行員だったわけですね」
「でもママには優しかった」
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