過去のこと 5

 今日は金融ブローカーのやっさんが寿司屋に記者を連れてきている。

「彼は週刊誌で伊藤の記事を書いている。今回記事の情報提供もしたので連れてきた。ちょっとあの未完成の原稿見せたれや?」

 言われて記者がバックから原稿を出す。

「これは初めての記事ですね?」

 もう飽きるほど週刊誌を読み漁ってきたが、この記事に触れた他社の記事はなかった。

「新宿に『白薔薇』という会員制のクラブがあります。ここは取材に出かけましたよ。ママは歳は30歳頃のニューハーフです。ちょっと女でもかなわないシャープな美しさです。彼女なら男でもと思いましたよ。取材には応じてくれませんでしたが、他の店の子に話を聞きました」

 クラブの入り口の写真を見て記憶を掠るものがあった。

「伊藤はここの裏のオーナーらしいのですよ。店の子に言うとママはオーナーと呼んでいるとのことでした。店の登記を調べたら、伊藤の妹名になっています。ここによくS銀行の頭取が御忍びで来ているということです。これは私の調査ではまだ頭取になる前に総会屋にいた伊藤と出会っています。想像ですが、頭取をここに連れてきたのだと思います」

「面白いやろ?」

「この時期から2年である日伊藤は縁のないITMファイナンスの役員になっている。これはS銀行の頭取になった功労賞の様なものです。頭取はITMファイナンスの企画を持っていたのだと思います。私は個人的に彼が日本バブルの火付け役と思っています」

「その伊藤と頭取が最近は仲が良くないと記事に出ていますが?」

「そうなんですよ。これも私の大いなる想像ですよ。ひょっとしたら伊藤が隠しカメラでママと頭取の絡むのを撮ったのではないかと」








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