糸口 6

 不覚にも調査のバーで飲んだ水割りに酔ってしまって眠ってしまった。いつもは疲れで寝込んでしまうのに、妙な感触で目が覚めた。だが、夢の中かどうか確信がない。カーテンからのアーケードの灯が淡く差し込んでいる。黒い影が私の下半身に取りついている。誇張したものが張り裂けて液を噴射する。

 私は堪えるようにその影の肩を掴んでいる。夢ではない。

「電気をつけないで」

 確かにサエの声だ。そのまま濡れた唇が吸い付いてくる。自分の臭いが充満する。イサムは小さなサエの体を抱きしめる。

「隠していることがまだ一杯あるの。このまま抱いて眠って」

 まるで夢のような朝にサエを見るといつもの布団の中ですやすや眠っている。

 今日は朝から親分に昨日の調査結果を見せる。

「地上げが残っている部分は?」

「この地図の赤い線で囲った区画です。後は閉められたアパートと駐車場です。甲区は東京の会社に移転されていて、乙区にはITMファイナンスがついています」

「この部分は土地と建物が同一の個人ですが、6軒店が入っています。でも営業をしているのはこのバーと組事務所だけです」

「バーは流行っていたか?」

「閑古鳥が鳴いています。でも立退きの金のために頑張っているようです」

「よう調べたな。明日に借主と会う。お前も来るか?」








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