第29話 平和
ここは渋谷の自衛隊の駐屯地。
「差別だ! 遂にあのエルメスが世間に良いことをし始めたぞ! 人の命を救っただと!? どうして私の所属する自衛隊に応援要請が来ないんだ!」
軍隊を司る魔法少女ルイヴィトンは、いつの間にか自衛隊に住み込みで就職していた。
「え? どうやって就職できたかって? それは簡単。私の軍事力を持ってすれば、防衛大臣がスカウトに来たのよ。」
「うそつき。国会に押し行って、閣議の最中の総理大臣や防衛大臣を脅したくせに。ちゅんちゅん。」
「泣きつかれて、日本を救ってくださいって言われたのは本当じゃない。」
「アホ~、アホ~。」
「zzz。」
ルイヴィトンは、雀のホログラム、カラスのヴェルニ、フクロウのダミエの3鳥の使い魔がいる。
「でも、今までにはなかった考え方ね。好き勝手に書いてきたから、良いことをするという考えが、全くなかった。」
「本当ですね。年も変わったし、考え方も変わるのかもしれませんね。ちゅんちゅん。」
「いいことか。やってみる価値はあるわね。」
実に感慨深い2019年の元旦である。
「ルイヴィトン様! 高速道路で煽り運転です! ちゅんちゅん。」
「ホーミングレーザー! ピンポイント照射! 目標! 煽り運転の車! ルイ・ルイ・ルイヴィトン!」
渋谷自衛隊駐屯地から追跡型レーザーが照射される。
次の瞬間、ドカーンっと煽り運転の車が炎上する。SNSではない。これが本当の炎上である。
「93パーセント命中! ミッションをコンプリートです! ちゅんちゅん。」
「おお!? いいことをするって気持ちいわね。」
ルイヴィトンは善意に目覚めた。
「東京の高速道路で煽り運転の車が炎上。首都高の出入り口は閉鎖。初詣と帰省に影響は必死。高速道路の復旧に2か月は必要か。」
そんなことはルイヴィトンには関係ない。
「ルイヴィトン様!? イージズ艦レーダーに未確認飛行物体が日本に目掛けて飛んできます!? ちゅんちゅん。」
「なんですって!?」
アラームが危険、危険と鳴りまくる。どこの国がミサイルを放ったかは外交問題になるので割愛。
「配備してあるパトリオットミサイルで迎撃を!」
「無理です!? 忘れたんですか!? 去年ミサイル配備は止めて撤収したじゃないですか!? ちゅんちゅん。」
「そうなの? 私、知らない。」
平和ボケの日本ではこんなもんである。
「フッフッフッ。ここで私が元日から日本を救えば、永遠のライバル、エルメスに差がつけれるてことよね。やってやろうじゃない! 日本にあるミサイルを全弾発射準備!」
「ミサイル装填完了です! いつでも撃てます! ちゅんちゅん。」
「よし! 全ミサイル発射! 目標は未確認飛行物体!」
ドカドカドカーンっと日本各地からミサイルが発射される。
「ミサイル発射! 12パーセント命中! ダメです!? 未確認飛行物体は日本に目掛けて飛んできます! ちゅんちゅん。」
平和ボケの日本の自衛隊では実戦経験が少ないので、実際の有事では役に立たなかった。
「仕方がない。私、自ら迎撃に当たる! 波動砲発射準備!」
「波動砲エネルギー急速チャージ間に合いません!? 未確認飛行物体、日本着弾まで、あと10秒!? ちゅんちゅん。」
正月早々、日本は国家滅亡の危機を迎える。
「私に任せなさい! エネルギー100%の波動砲発射! ルイ・ルイ・ルイヴィトン!」
渋谷自衛隊駐屯地からハイパーメガ粒子の波動砲が発射される。
次の瞬間、ドカーンと未確認飛行物体は波動砲に破壊される。
「命中です! 未確認飛行物体は撃破されました! ミッション・コンプリートです! やりましたー! やりましたよ! ルイヴィトン様! ちゅんちゅん。」
「お正月から日本を救うって、最高。エヘッ。」
こうして元日の日本は魔法少女ルイヴィトンのおかげで救われた。のちにルイヴィトンは内閣総理大臣賞を授与される。天皇陛下の園遊会にも呼ばれる。
「アホ~、アホ~。」
「zzz。」
新年も平和でありますように。
つづく。
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