Drift10 勝抜
休憩ったってなんもねぇじゃねぇか! ふざけるなよ、少しぐらい何か用意しとけ。売店もないのはどうかしてるわ。他の奴らは各々持ち込んでるみたいだし、最初にアナウンスしろよな。
「はーあ、ビールが飲みてぇなぁ……」
ボヤキの一つも出るモンだ。
だが施しの天使は不意に現れる。
「おねえさーん、差し入れ持ってきました!」
「カイト! 入ってきて良いのか?」
「はい、最終試験前は大丈夫なんです」
「ほーなるほど。それにしても助かった」
いやーここに来てカイトからの差し入れ、正に最高のタイミングだ。流石にビールはなかったが軽食とカイトが作った薬草茶は美味かったから良し。
そうしていると、試合開始の合図が来た。
行くとするかねぇ。
「じゃあ、僕は観客席に行きますので」
「はいよー」
カイトは扉の向こうに消えてゆく。
ん? 観客席ってどういう事だ?
とにかく控室にいくか。
「第一試合を開始する!」
控室から見れば完全に試験はコロシアム状態だ。最早試験なのかこれは……
ま、何でもいいが試合は意外に中々面白かった。今の試合は短剣使いと剣士の戦いだが現状、短剣使いが押している。リーチの加減では剣士が勝るが短剣使いの連続攻撃を剣士が捌ききれずリングの端に追いやられていく。剣士もやられっぱなしではないが決定打にはならないのがもどかしいだろう。
と、短剣使いの連続攻撃で剣士の姿勢が崩れたところに短剣使いの蹴りが入って場外。短剣使いの勝ちである。
このトーナメント、各々好きな武器を持ち込めるが出場前に魔法で細工をされ、致命傷や殺害をする事は出来なくなっている。もちろん素手でもだ。
とにかく、色々見ている内に私の番である。相手はガタイもしっかりしている高身長の大剣士だ。
「第二試験、貴女の技は素晴らしかった。手合わせ出来て光栄だ」
ほーコイツは良い奴っぽいな。それに私の動きを少しばかりは目で追えたらしい。こっちもちゃんと返すか。
「あんたも凄かったぜ。よろしく頼む」
お互いに定位置に着く。
「試合開始!」
審判の声と共に相手も私も距離をとる。突っ込んでも勝てない訳ではないが楽しみたいからな。
暫く相手の出方を伺いつつ、まずは私から仕掛けた。
ガキィン!
高速接近からの右ストレート。だが大剣によってガードされてしまう。
「中々やるね、あんた」
「貴女こそこんな一撃を、だが!」
ブォン!
ガードからの薙ぎ払い、こいつは凄い。少々吹っ飛んでしまった。
「これでどうだ!」
ズォン!
薙ぎ払いの回転を利用した身を翻しつつの高速跳躍、からの突撃。これは普通なら避けられない。
「凄いね」
だが私は避けられる。化物だからな。
「お返しだ」
ズバァァン!
避けると同時に回転蹴り。これが大剣士の体の側部を捉え、吹き飛ぶ。
「ぐっ、何という蹴り……ならば!」
「っ! 反射光が……」
大剣士は刀身に日光を反射させ視界を奪ってきた。上手いやり方。流石に対処できん。
ドンッ!
「おっと!」
足下が揺れる。跳躍からの震脚か? 地震並みだな。
「これで決める!」
なるほど、振り下ろしか!
ドォォォン!
――
――――
「……あんたは凄い。だが私の勝ちだ」
「! はは、完敗だ……」
晴れる土煙。
振り下ろされた大剣。
その背に立ち、ナイフを突きつける。
「勝者、K!」
ゴングが鳴り、試合は終了した。まずは順当に一勝か。そこそこ楽しかったな。
「ありがとう。またいつか手合わせ願いたいよ。目眩ましについては申し訳ない。小細工無しに挑むべきだった」
「気にするなよ。目眩ましもちゃんとした戦術さ。こっちこそありがとな」
握手をして、試合は終わった。戦ってみて思うがこの大剣士はもしかすればもしかするな。
この後の試合はあまり楽しいものではなく、難なく勝ち進んだ。カイトの声援は最高だったがな。
そしていよいよ決勝である。相手はあの大男だ。
「今までは知らんが俺に勝てると思うなよ」
「どうとでも言え、デクの棒が」
喧嘩売ってきた相手だ、容赦はしない。
「覚悟するんだな」
試合が始まる。
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