化物少女K -In The Wonderland-

Drift6 酒盛

「よっしゃ！　酒盛すっかな！」

　さてさて異世界の酒はどんなもんかな？　ビールみたいなのがあれば最高だ。

「あの……文字とか読めますか……？」

「うお、読めねぇ……困ったな」

「とりあえずボクが頼みますよ」

「ん、よろしく頼むよ。あの酒は何だ？　向こうのとよく似てるんで気になるね」

「あれはビールですね。ボクは飲まないのでよくわからないのですが」

「同じ名前のが向こうにあったからアレにするわ。後は適当に頼むよ」

　ビール！　同じ名前なら味も同じだと期待したい。肴はまぁ適当でかまわない。問題は酒だ酒。

　ああ、私は人間じゃない、化物だ。人間の規則に縛られない存在だからな。そこらへんはよろしく。

「んーと、この肉料理と……あ、でもコレは高いし……」

「頼め頼め〜奢ってあげるからさ。存分に食べなよ」

「な、ならコレと、後この揚げ物と……」

　いっつも節約してるせいか色々食いたい物も多いんだろうな。片っ端から好きそうなメニュー選んでる。

　横に書いてある値段っぽい数字をみる限りじゃ手持ちでお釣りが来る。

　宿代10000G（ゴールド）払ったから残りは90000G、ビールは4G、カイトの食べたい肉料理は30Gこれから考えられる事は一つだ。大体この世界は1ドル100円くらいの気持ちでいい。

　Aグレードの部屋はかなり高い方なんだろうな。

　酒と飯が来る前に確認しとこう。

「カイト、Gよりも下の単位はあるか？」

「ありますよ、S（シルバー）です。100Sで1Gになります」

「なるほどなー」

「あ、最初に説明しておけばよかったですね……」

「あー大丈夫。大体分かったし、向こうでも似たような単位あったから分かりやすくて良かったよ」

　と、金の単位が分かったところでビールと突き出しが出てきた。美味そうな肉の突き出しじゃん。気が利くなぁ。

　カイトは果物ジュースを注文してたからそれで乾杯だ。

「んじゃ、かんぱーい。おつかれ〜」

「お疲れ様です〜」

　さて、一気といきますかぁ！　ちょっとカイトを驚かしてやろう。大ジョッキだ、一気のやりがいあるぜ。

　あ、人間は真似するなよ。死ぬからな。

「んぐっ、んぐっ、んぐっ、ごぐっ……」

「お、おねえさん……一気飲みは危ないですよ」

「ん、はぁ〜あぁー最高だなぁ。ん？　ああ、心配すんな、人間ならヤバいが私なら大丈夫さ」

「それでも心配ですよぉ」

「はは、大丈夫大丈夫。酒には強さからさ」

　案の定の反応だ。可愛いねぇ。ま、お構いなしなんだけど。

「おーい！　ビール追加ー！」

　追加だ、追加！　うるさい奴らもいないし派手に飲みまくってやる。こっちのビールも美味いなぁ！

「はーっ！　美味いねぇ、カイトがいるから尚更かもなぁ！」

「？　どういう事です？」

「可愛いヤツがとなりにいたら酒は美味しくなるのさ」

「か、可愛いですか？　ボク？」

　あーもう、首かしげながら聞くなよー。可愛いなぁ！　自覚ないんだろうから余計だ。うへへ、この表情は私のものだぁ。

「おい、ねぇちゃん！　よく飲んでるなぁ！」

「あ？　美味いから飲んでるのさ。あんた誰だ？」

「かーっ、クールだねぇ。どうだい？　飲み比べでもしないか？」

　あー面倒くさい酔っぱらいか。断っても断れん奴だ、相手になってやるのが早い。

「ん、受けてやるよ。その代わり私が勝ったら今日の飲み代は全部出してくれよな」

「おお、言うねぇ。だがその条件付きならこっちも……」

「あー面倒くさいの嫌いだからあんたが勝ったら私をベッドに連れてっていい」

「な、強気だな……ふふふ、それなら文句はない。やってやるよ！」

「んじゃ、始めるか」

　はぁ、面倒くさい人間はどこの世界にもいるもんだ。ま、タダ酒になるからいいや。

「おねえさん、そんな条件出さなくても……」

「いいんだよ、こんな条件出さないと面倒くさい相手だからさ」

「でも……」

「大丈夫大丈夫、カイトに手出しはさせないからさ」

　男に聞こえない様にカイトに話した。まぁ事実だし、カイトに何か手出しするなら容赦しない。人間を殺すのは嫌いだがカイトに手出しする奴は人間だと認定しない。それだけだ。

「かーっ！　美味いなぁビールは！」

「同感だ。一気飲みが捗るね」

「さっきから見てたが、ずっと一気飲みか」

「んぐっ、んぐっ、そうだよ。あんたも早く飲まないと負けるぞ」

「むむ……俺もナメられたもんだな……いいぜ！　最近燃える飲み相手がいなくて困ってたんだ！」

「なら、私は遠慮無く飲むだけだな。あ、おかわり」

「俺もおかわりだ！」

　ふん、こいつはあと二十杯も飲まん内に潰れるだろ。人間にしちゃ一気飲みのペースが早すぎる。体格はデカイが知れてるな。

　もし仮にコイツが人間とは違う種族だとしても、それなら「化物として」私が相手するだけだ。

「おかわり」

「おかわりだ！」

　飲み代と飯代が浮くならそれでいい。カイトの相手もしながら男をあしらう、それでいい。

「カイト、好きなもん好きなだけ食べなよ。どうせタダになるからな」

　さて、飲み明かすかねぇ。