Drift4 宿泊

 そうだ、酒場へ行く前にやることがあった。


「なあ、宿はとってるのか?」

「はい、その宿に酒場が併設されているんですよ」

「ほーじゃあ私もその宿をとった方が良さそうだな」

「そうですね、あ、二人部屋の方が割安になるんですが……」


 お、割安。という事は酒代に回せるって事か。いいねえいいねえ。


「なら二人部屋にしようか」

「良いんですか? ボクと一緒だなんて……」


 いやいや、この子と一緒がいい、むしろ一緒のベッドでいい。うへへ……


「宿代は浮かせた方が良いからね。それに私はココの事よく分かってないから一緒の方が都合いいんだ」

「それなら……よ、よろしくおねがいします」

「あ、そうだ名前聞いてなかったな。私はKだ、よろしくな」

「ボクはカイトって言います、よろしくです」


 自己紹介が終わった所で宿についた。まあまあ所謂宿屋って感じだな。ちょいと外観はボロいがまあ雰囲気だと思っておこう。酒場は賑わってるからヨシ。


「あのーすみません」

「ん、カイトくんか。どうした?」

「実はパーティーメンバーが増えたので部屋を変えたいんです」

「ほほー出来ない事は無いんだけど……」

「?」

「今、二人部屋がAグレードしか空いてないんだ」

「ええ!」

「ご、ごめんよ……今日はいきなり団体が入ってさ……」


 この宿主、嘘は言ってない。それにカイトの事を悪いようには扱っていない。つまり悪いやつではない、といった所か。


「それにしても貴女は一体?」

「森で偶然カイトを助けてから一緒に行動してるんだ」

「おねえさんすっごく強いんです、でも記憶が無いみたいで……」

「なるほどなあ、カイトを助けてやってくれてありがとう。言っちゃ悪いがカイトは強くなくてね。何とかここで半分住み込みでやってるんだ」


 なるほど、それで宿の一室を借りてる訳か。だが住み込みなら宿の部屋は使わないのがセオリーなはずだが? 流石に気になる。


「何で一室を貸してるんだ? 住み込みなら客室じゃなくても」

「ああ、それは私がカイトに助けられたお礼、といったところでね」

「助けたなんてそんな……」

「いやいや、あれは助かったよ。医者の処方箋の間違いに気づいてくれなくちゃ死んでたかもしれないんだから」

「そういって貰えると薬草学士として嬉しいです」

「薬草学士?」

「ああそうか、記憶をなくされてるし珍しい称号だからね」


 聞いてみると薬草学士は冒険者ギルドの定める職には入っていない職で珍しいものらしい。所謂イレギュラージョブと言うやつだ。


「なるほどな。ああ、部屋だけどAグレードだと幾らかかるんだ?」

「うーん、カイトの事のお礼も考えて割引は出来るんだけど連泊になると結構な額になるね……」

「10000Gゴールドで何泊できる?」

「それならで20連泊くらいは出来るけど……」

「んじゃ、それで。はい、先払いしとくよ」

「! そんな大金どこから……」

「あ、そういえば換金が上手くいったんですよね」

「ああ、カイトを襲いかけてたオーガの素材とその取り巻きの素材を換金したらいい値がついてな」

「そ、そうだったんですか。カイトの事も含め今一度お礼を」


 とりあえず部屋に案内してもらって風呂に入る事にした。よく考えたら汗だくで気持ち悪い、酒より先に風呂だ風呂。


「カイトー、風呂入ってから酒場行くか?」

「そうですね、汗もかきましたし」

「一緒に入るか? あはは」

「んなっ! か、からかわないで下さい!」

「冗談だよ。先に入っていいか?」

「ボクは荷物の整理をするのでどうぞ」










 さーてお風呂タイムだ!


 一緒に入りたかったなあ、まあこの先幾らでも機会はあるだろ。

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