『流石ですわ、お兄様』と褒めてくれる妹が欲しかったけど、何故か自称張飛の生まれ変わりの弟が養子で来て『さすがだ、兄じゃ!』と褒めてくれるようになった件について
ゲロ臭い女は難儀なものです ver2.0
ゲロ臭い女は難儀なものです ver2.0
目の前の女の人がカッと目を見開くと、衝撃が走って、僕の身体が後方へと押しやられた。
「おわ?!」
殴られたというよりもむしろ強力なプレッシャーで押しやられたかのように僕の身体が宙へと投げ出される。
風で薙がれたのではなく、強力な力を常に押し込められていて、前へと進めず後ろへと飛ばされていくような感覚だ。
空へと打ち上げられて、足が地に着いていないだけにちょっぴり不安になる。
しかも、僕を打ち出した力は常にかかり続けていて、風で飛ばれているかのように身体が飛んでいき、屋上から外へと投げ出される。
「……その程度?」
女の人の姿が幻のように消滅するなり、僕の背後からそんな声が聞こえてきた。
瞬間移動?!
「ちぃ!!」
相手が僕と同じ超能力者であると察知するも、振り返って確認する暇もなく、今度は上から数倍の重力をかけられたかのように地面に向かって真っ逆さまに落ちていく。
身体が数百キロ、いや、一トン近い重しを僕の身体に押しつけられたかのような圧迫感があった。
それだけならまだしも、重みが増していくだけではなく、僕を地面へと激突させる意図があるかのように僕にかけられているプレッシャーが増大していった。
気づいた時には地面が目の前へと迫り、そのまま、コンクリートの道路にものすごい勢いで衝突した。
地面が凹んでいき、クレーターができたのが分かる。
「……」
体勢を立て直そうとする間もなく、さらにプレッシャーをかけられて、僕の身体が地面へとめり込んでいく。
壮絶な圧力をかけられているのか、クレーターが広がっていく。
というか、息をするのがちょっとだけ苦しい。
僕にかけられていたプレッシャーが解かれるも、次の瞬間には、またしても空へと打ち上げられて、地面へと叩き付けられるという流れが何回かあった。
気づいた時には、最初はクレーターであったところが穴のようなものがあいていて、地下に広がるインフラ施設の一部が露出してしまっていた。
「あら? 反撃もなく終わってしまった?」
地表へと打ち付けられたのだけど、それで終わりだと思ったのか、今回は空へとは跳ね上げられはしなかった。
僕の視界は夜空が広がっていたのだけど、その一角に僕を見下ろすような格好の女の人の顔が入って来た。
自分の能力に自信を持っているのか、その顔には勝ち誇ったかのような余裕の笑みがあった。
「……これで終わりなの?」
僕は幾ばくか失望していた。
超能力者らしいから、もっと重い一撃やら僕の防御フィールドを貫くほどの攻撃を加えてくるのかと思ったら、そうでもなかった。
ため息が思わず漏れてしまうほどの軽い攻撃ばかりで、防御フィールドを貫通する事さえできてはいなかった。
「え?」
勝ち誇った顔が崩れる。
「自分の能力を過信しすぎた代償は高く付くって覚えておいて。モブ子を泣かせた罪は万死に値するんだけど、手加減してあげる」
あえて相手の防御を促すように言い、女の人が防御フィールドを展開するのを待った。
能力を発動させたのを感じ取ってから、おもむろにサイコキネシスを行使して、一撃を女の人へと繰り出す。
「ッ?!」
紙みたいな防御力だった。
僕の一撃が呆気なくフォールドを破壊し、生身の身体に一撃を加えたのを確信した。
女の人の顔から自信が一気に失われていき、絶望に似た表情を浮かんでくる。
「万次郎の兄貴だかなんだか知らないけど、その程度なのかな?」
女の人を僕がされたように空へと打ち上げる。
そして、ある程度の距離まで達したところで、空に空へと舞い上がらせるためにもう一撃。
その際、防御なんてする事ができないからまともに受けて、胃液のようなものを吐き出しながら、白目をむいた。
やりすぎたかな。
そう思いながらも、もうぐったりとして抵抗さえできないであろう女の人を瞬時に万次郎が倒れている屋上へと転送させた。
「さて、博士の方もどうにかしないと」
やれやれと思いながら、頭をかいた後、僕も同じ場所へとテレポートした。
「可哀想だったかな?」
屋上に戻ってきて、そこに倒れている女の人を見ると、僕は不覚にも不憫に思ってしまった。
まじまじと見つめて見ると、結構綺麗で、僕の好みかもしれない。
けれども、嘔吐物でべとべとになってしまっている姿を見ると、千年の恋も冷めるとかいうかなんというか。
超能力を持っていたが、僕の足下にも及ばないのにも関わらずイキっていただけの女だったし、ちょっと遠慮したいのは確かだ。
「情けをかけてあげるべきか……」
仰向けで気絶しているので、吐瀉物で窒息死してしまう可能性さえあったので身体を横にして、空気が吸えるようにしておいた。
近づくと、結構ゲロ臭くて難儀したけど。
その上、身体を横にすると口の中に残っていた吐瀉物が口から流れ出して、僕の靴にかかりそうになったりした。
目の前で死なれると後悔するだろうから、これで良かったんだ。
「ええと……」
屋上にいて、僕が来たときと変わらぬ立ち位置にいるラリアット・フランケンシュタイナーに目を向けた。
その背中からは何もうかがい知る事ができそうもない。
敗北した事を肌でひしひしと感じているのか、まだ負けたワケではないのかと思っているのかを。
「……何故、わしの復讐を邪魔をした」
どうしようかと思案していると、ようやくフランケンシュタイナーが口を開いた。
どうやら僕に問いかけているらしい。
「僕も訊きたい。なぜモブ子と千宮院蘭との戦いを邪魔したの?」
「何の話だ? 絶好の機会だと思ったので襲ったまでだ」
「なるほどね。そっちが勝手に絡んできたのが悪い。僕としては、降りかかる火の粉を振り払っただけだよ。何がしたかったのか分からないけれども、他人を巻き込んだ……いや、僕を巻き込んだのが運の尽きだよ」
モブ子と千宮院蘭との戦いに、勝手に割り込んできたのが悪いよね。
何がしたかったのか、僕には分からないけど、他人を巻き込むべきではないのは確かだ。
「ならば、わしも火の粉を振り払い、千宮院家に復讐せねばなるまいな。この超人化の薬によってな」
フランケンシュタイナーは懐から注射器を取り出して、自分の腕に針を刺して、何かを注入し始めた。
「……さっさと終わらせよう」
早く万次郎を病院に運んでやらないと。
病院を抜け出して、さらに怪我をした万次郎が悪いんだけど、そうしてあげるのが兄の義務ってものでしょ。
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