『流石ですわ、お兄様』と褒めてくれる妹が欲しかったけど、何故か自称張飛の生まれ変わりの弟が養子で来て『さすがだ、兄じゃ!』と褒めてくれるようになった件について
モブ子はメス顔をしていたか否か ver2.0
モブ子はメス顔をしていたか否か ver2.0
僕が通っている高校は、電車で二駅先にある。
モブ子が通っている中学校は、僕がいつも利用している駅の先にあるので、駅まで一緒に行こうと思えば行けたりする。
何も言わずにむすっとしているモブ子の手を引いて、駅まで後少しという頃合いだった。
「今日はおかしな日だね」
「そうね。兄じゃの頭がおかしいからじゃない?」
「どうして僕の頭を結びつけるかな? 僕はごく普通の高校生の頭の持ち主だ」
どういうワケか、道ばたに十数人の男達が倒れていた。
もちろん裸というワケではなく、服は着ていたが。
見た目は、さっき僕が倒したような半グレというべきか、ちょっと遊んでいますというべきか、やんちゃしていますといった風貌の人達だ。
もしかして、この周辺でそういった人達の集会でもあって、抗争でも起こったりしたのかな、なんて僕は考えてしまった。
「お前を狙っていたであろう怪しい奴らがたむろしていたから僕が倒しておいてやったぞ」
物陰にでも隠れていたのだろうか。
唐突に僕の目の前に人影が出現していた。
出て来たと言うべきか、突然わいて出たような空気の流れがあった。
「……はい?」
倒れている男達とは違い、純粋にやんちゃ好きそうなポニーテールの女の子だった。
『亀』と書かれているオレンジ色のTシャツを着ていて、ダボダボのこれまたオレンジ色のズボンという奇妙な格好をしていた。
体型が結構グラマラスで『亀』という文字が出っ張りによって歪んでいる。
「……あんただね? 張飛の生まれ変わりだとか自称しているのは?」
好戦的な目で僕の事を睥睨してくる。
結構威圧的で、返事次第ではすぐにでも殴りかかってきそうな気配がある。
「人違いです」
どうやら僕の情報が間違って広まっているようだ。
どこをどうすれば、万次郎と僕が間違われるんだろう?
僕は万次郎みたいに豪胆そうな顔つきとか体躯をしていないというのに。
「これは異な事を」
ポニーテールは皮肉を込めるように右目を大きく見開いて、僕を挑発するように見始めた。
「だから、人違いです」
どうしたら、信じてもらえるんだろう。
けれども、弟の万次郎を売り渡すような行為は僕にはできない。
何か良い解決方法はないものだろうか。
「僕は
「十本刀? 君こそ、漫画とかの設定を現実のものとして捉えちゃっているようだから、現実を分かった方がいいし、現実をしっかりと見た方がいいんじゃないかな」
「か・た・な、じゃない! が・た・り! 十本語だからね!」
僕に顔を思いっきり近づけてきて、珠がムキになって否定してみせた。
どうやらよく間違われるようだ。
十本刀だと『ござる』が口癖の逆刃刀を持つ剣士が出てくる物語の有名な十人の配下だからね。
そんなパクリ設定のような人から『生まれ変わり』云々を言われても何ら説得力がないというものだ。
「……というか、なんでそんな事をしているの? 十本語という人達……というか、君は?」
「よくぞ言ってくれた!」
珠は、さらに僕との距離を縮めて、嬉々とした表情を顔一面に表す。
どうやらその事について説明したくて、うずうずしていたのかもしれない。
「最近、転生なら何やらがフィクションの世界で増殖しているせいか、自らを『過去に存在した英雄』だと思い込み始める輩が増えているんだ。そんな輩に現実という名の拳で語り合おうというのが我ら……」
「それくらいでもういいです。何度も言うように、僕は人違いなんで」
僕はモブ子の手を握ったまま、先へと進もうとしたんだけど……
「まだ説明は終わってないぞ!」
珠は僕ではなく、僕が手を繋いだままでいるモブ子に標的を移したかのようにキリッとした視線を投げかける。
「こんなメス顔した恋人の前で僕に負けるのが嫌なのかな~?」
メス顔?
その真意が知りたくてモブ子に顔を向けようとするなり、モブ子は繋いでいた手を振りほどいた。
「いえ、恋人ではありません。赤の他人です」
え?
いきなり裏切るかな、モブ子!?
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