死ぬな、と

 死ぬな、と

 わたしの思い出がわたしに命じるから

 わたしは生きている

 わたしには苦痛な思い出があり、それらは絶えず死ねとささやいているように思える

 それは違う、と

 今夜、静かな気分のいまなら

 一夜かぎりの勇気によって言える

 わたしを死に追いやる痛みが

 不思議なまわり道でわたしを生かしていた

 わたしは思い出のすべてを愛していた

 思い出にあらわれる人々を愛していた

 わたしが愛せないわたしの加害性を留保しながら

 癒えない矛盾に譲歩しながら

 存在は善だと肯定しないまま

 わたしが見つめる不幸を許していた

 死ぬな、と

 わたしにわからないやり方で

 無数の声が生まれていた

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