忘却要請

 思い出した

 なにかを

 なにを?

 気づくのをおそれるように

 なにを思い出したかを忘れた

 忘れたことにした


 たびたび思い出す

 きょうも

 突然それはやってきて

 固まりそうになり

 救助隊のように即座に

 忘却を要請して

 口から望まない呻きがこぼれるのを防ぐ


 思い出す

 それが

 鈍器の一撃よりも

 脳を揺らすということ

 忘れる

 常に思い出していることを

 忘れたことにして

 夜まで持ちこたえる

 痛みが無限につづく夜

 朝が来ない

 光がないから

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