ほんとうの

「もし真理であるとよばれる思想があるとすれば、それは決して党派的な思想じゃありません」


 好きな詩人が

 マタイ伝について語った講演のなかで

 そう言っていた


「どのような党派の人間から、突きつけられても、やはり真理であると認めるほか仕方がない、というふうな思想がもし可能とするならば」


 可能なのだろうか

 可能であってほしいな

 そんな真理が

 だれもが納得するような

 そんな救いが


 詩人は生前

 色紙になにか書いてくれと頼まれると

 宮沢賢治の言葉を

 自分なりに仮名遣いを改めて

 書き添えたりしていたそうだ


「ほんとうの考えと うその考えを 分けることができれば その実験の方法さえ決まれば」


 党派的ではない思想

 ほんとうの考え

 そんなものが

 あればいいな

 本当に

 あればいいな

 そして

 党派的ではない

 ほんとうの優しさが

 どこかにあれば

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