さようなら百景

 さようならには

 無限の多様性がある

 明日も会えると信じるさようなら

 嫌悪と皮肉を隠したさようなら

 もう会えないとは信じたくないさようなら

 この日を境にして自分の人生にその人が現れることは二度とないという冷厳な事実が

 その人を自分の人生においてはすでにして死者と看做さなければならないという耐えがたい運命を刃物のようにちらつかせて

 その運命を生きることが自分を死者として煉獄の苦痛にとどめながらも

 なおもその痛みが呼び覚ます記憶に引きずられて自ら死ぬことも許されないという予感にあらかじめ震えている

 さようなら

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る