ぼくが二人いるとして

 ぼくが二人いるとする

 片方のぼくは不幸

 片方のぼくは幸福

 不幸なぼくは

 幸福なぼくを知らない

 幸福なぼくは

 不幸なぼくを知らない

 右手のやることを左手に知らせるな

 そんなところだ


 不幸なぼくにこう訊ねてみる

 きみが二人いるとする

 片方は幸福で

 片方は不幸だ

 さてきみは

 どちらだろう?


 不幸なぼくはこう答える

 きっと自分は幸福な方です

 世の中には

 虫けらのように踏みにじられて

 息も絶え絶えな人があふれています

 自分はきっと

 幸福な方です


 幸福なぼくにこう訊ねてみる

 きみが二人いるとする

 片方は幸福で

 片方は不幸だ

 さてきみは

 どちらだろう?


 幸福なぼくはこう答える

 きっと自分は不幸な方です

 世の中には

 鳥のように翼が生えて

 天にも昇らんばかりの人があふれています

 自分はきっと

 不幸な方です


 本当は

 どっちが幸福で

 どっちが不幸なのだろう

 どうでもいいや

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