マラソン

 マラソンに水分補給が不可欠なように

 人生は幻想を必要とする

 いかなる幻想とも無縁な人間が

 存在するとは思えない

 幻想が涸渇すると魂が死ぬ

 とはいえこのマラソンのゴールには

 肉体の死が待っている

 いったい何のために走るのか

 どこに向かって走るのか

 だれにもわからない

 止まれば死ぬ

 止まった地点がゴールだ

 そして多くの人が

 泣きたくなるほど止まりたがっている

 けれど止まろうとすると

 綺麗な景色が眼の前にあらわれて

 涼しい風が頬をかすめて

 足は動くのをやめず

 もう少しだけすすもう

 もう少しだけ見てみよう

 そんなふうに言い聞かせながら

 ランナーは死ぬまで走るのをやめない

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