だれも死ななかったみたいな日常

 人間が死んだ日を思い出す

 それは毎日のことではあるけど

 気づける日なんてほとんどない


 一斉に死んだのではなく

 ひとりひとりが個別に死んだ

 その孤独を

 いまだに理解できない


 死の切実さは

 すぐに遠ざかる

 砂は

 握りしめてもこぼれる


 日常は裂けない

 人が死んでも

 日常はびくともしない

 変わらない

 不思議と


 だれも死ななかったみたいな日常


 死に意味がない日常は

 生の意味すら否定している


 人間に他人の死を意味づける権利はない

 他人の生も


 こびりつけられた意味は痛ましい


 無関心が日常を支える

 日常をやり過ごす方法は

 他にないから


 なにもわからない

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