夜のサイレン

 夜遅くに

 外から聴こえた

 救急車のサイレン

 音色が少し

 違う気がした

 ボーイソプラノのようなサイレンではなく

 バリトンのようなピーポーピーポー

 控え目にしめやかに

 急を告げていた


 どこかでだれかが

 助けを求めているのだろう

 叫びは聴こえず

 音楽のような

 サイレンだけが夜に響いて

 室内で耳を澄ませるぼくは

 今夜はまだ死にかけてはおらず

 遠ざかるサイレンを無視して眠るだけ

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