一切のすべて
わたしはもうだれも知らなかった
鳥を呼んでいた老人も
丘に眠っていた牧人も
わたしはもうだれも知らなかった
震えた痛みにおののく少年も
苦り切った表情の慈善家も
わたしはもうだれも
わたしを知るだれとも出会えなかった
わたしを知っている
空から見下ろすだれかの衣擦れ
その気配だけが
夕暮れの茜さす塔の頂上で
わたしが出会える一切のすべて
世界の世界
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